『ボケない散歩 83歳、健康を研究する教授の習慣』 (石田良恵/アスコム)第6回【全6回】


「80歳を超えても仕事を続け、毎日を楽しく過ごせるのは散歩のおかげ」と話すのは、保健学博士の石田良恵先生です。長年、運動生理学を専門に研究されてきた石田先生は、『ボケない散歩 83歳、健康を研究する教授の習慣』(アスコム)の著者でもあります。実は「歩くこと」の健康効果は、さまざまなデータでも実証されています。例えば、「1日1500歩で年間約3万5000円の医療費を節約できる」という国土交通省の試算があるのをご存じでしょうか。さらに、歩くことが認知症予防に役立つという研究結果も、世界各国から報告されているのです。とはいえ、健康のためだからと無理をするのは禁物。大切なのは、今の自分の体力に合わせて、楽に、安全に続けることです。そこで今回は石田先生の著書より、散歩を無理なく楽しむための「体づくりのヒント」をご紹介します。

※本記事は石田 良恵 (著)による書籍『ボケない散歩 83歳、健康を研究する教授の習慣』から一部抜粋・編集しました。

脳に合図を送る「3つの準備運動」

「散歩の前に、準備体操をしましょう」なんて言うと、ちょっとめんどうな感じがしますよね。でも、80歳を超えた今も、私がケガもなく、安全に歩き続けられているのは、散歩の前に必ず体を軽く動かしているからだと思っています。

筋肉は、急に動かすと伸び縮みがうまくできず、関節や腱に大きな負担がかかってしまいます。そのため、いきなり歩き始めると筋肉や関節に痛みが出たり、ケガにつながったりすることがあります。

特に高齢になると、筋肉のしなやかさが失われやすいため、準備運動なしで歩き始めるのは避けたいところです。

それだけではありません。急に歩き出すと、心拍数が一気に上がり、心臓にも負担がかかってしまいます。でも、歩く前に少し体を動かしておけば血液の流れが促されて、心拍数も少しずつ上がるので、心臓への負担を軽減できるのです。
 
それから、準備運動は体だけではなく、脳にもとてもよい刺激になります。

体を動かすことで、脳への血流が増えて活性化され、集中力や判断力が高まることがわかっています。つまり、準備運動は「これから歩くから、しっかり働いてね!」と、脳に合図を送るようなものと言えます。
 
特に、私のように朝の散歩を習慣にしている方にとっては、準備運動は欠かせません。目覚めたばかりの脳は、まだぼんやりしていて注意力も十分ではありません。そのまま外に出ると、段差につまずいたり、信号のタイミングを見誤ったりするおそれも。そこで、歩く前に準備運動をしておけば、脳が「活動モード」に切り替わり、安心して歩けるようになります。

私が散歩に出かける前に行っている準備運動は、次の3つです。

準備運動1 「ひじ回し」

上半身の筋肉をほぐすことで、腕振りがスムーズになり、リズミカルで楽に歩けるようになります。

  イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より
イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より

ひじで前から後ろへ、後ろから前へ、大きな円を描くように回します。前から後ろ、後ろから前、それぞれ10回ずつ行いましょう。

準備運動2 「腰回し」

骨盤まわりの筋肉をゆっくり動かすことで、こわばりをほぐし、関節の動きがなめらかになります。

歩幅が広がるだけでなく、骨盤のゆがみが整うことで安定して歩けるようになり、転倒予防にもつながります。

  イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より
イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より

腰をぐるぐると、時計まわり・反時計まわりにそれぞれ10回ずつ回します。

準備運動3 「上体ひねり」

背中や腰まわりの筋肉がほぐれて、姿勢が安定し、歩いているときに体がぐらつきにくくなります。

  イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より
イラスト/古谷充子『ボケない散歩』より

両脚を左右に大きく開いたら、ひざとつま先を同じ方向に向けます。

両手をひざの上に置きます。ひざが動かないように注意しながら、片方の肩を逆側のひざに近づけるように上体をひねります。

ひねりきったところで30秒ほど止めましょう。これを左右で行います。
 
これら3つをすべて行っても、数分です。

ちょっとめんどうくさいと思っても、数分で心と体の準備が整い、ケガも避けられるのですから、やってみても損はないはず。

「よし、今日も元気に歩こう!」という気分にもなれます。
 
ケガなく、楽しく散歩をするために、散歩前の3つの準備運動を、ぜひ習慣にしてください。