「がんは結局、運の要素が大きい」と話すのは、病理学者として長年がんと向き合ってきた仲野徹先生。食生活に気を配り、健康的な暮らしを心がけていても、病気はある日突然やってくることがあります。だからこそ「がんは運」という言葉は、決して突き放すものではなく、「自分のせい」「生活習慣が悪かったのかも」と自分や家族を責めてしまう気持ちを、そっとほどいてくれる優しさを持っています。本記事では、仲野先生の著書『がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖』(KADOKAWA)より、がんという病気と自分らしく向き合い、納得して人生の選択をしていくためのヒントを抜粋してお届けします。

※本記事は仲野 徹 (著)による書籍『がんは運である? 自分事として向き合うための手控え帖』から一部抜粋・編集しました。

適度な運動

適度な運動も、がんの発症を抑制することがわかっている。身体活動量によって四つのグループに分けて解析した国立がん研究センターによるコホート研究によると、男性では結腸がん・肝臓がん・膵臓がんで、女性では胃がんで、身体活動量が最大の群で有意に罹患リスクが低下していた。また、がんの発症率低下の傾向は、余暇の運動頻度の高い人や高齢者においてより顕著であった。

なるほどという気はするが、どうして運動が発がんに関係するのかを考えてみるといささか不思議ではある。運動をしっかりすると、次に紹介する体重の維持にはある程度の効果がありそうだ。それから、免疫系や内分泌系の関与もあるとされているし、運動によって筋肉から分泌される物質も関係していそうだが、いったい何がどの程度効いているのかはよくわからない。

講演でこういったお話をした時、よくいただく質問に「どれくらいが適度な運動ですか?」というものがある。これは超難問である。あくまでも個人的な意見だが、無理に運動をして怪我をしたり健康を害したりしたという話を耳にすることもあるので、常々、運動のしすぎは体に悪いと考えていることだし。発がんにとっても、運動をしすぎると活性酸素が作られすぎて、遺伝子に傷をつける可能性がないではない。いつも困っているのだが、困った時の国頼み、ここは厚労省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に書かれている基準を紹介しておきたい。

有酸素運動として、毎日、歩行あるいはそれ以上の身体活動を成人は60分、高齢者は40分以上が望ましい。以前はこれだけだったのだが、2023年版からは週に2~3日の筋力トレーニングも推奨されている。あと、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないのも大事とのこと。

適度な運動は、がんのリスクを下げるだけでなく、よく知られているように生活習慣病のリスクも下げる。さらには、認知症のリスクまで下げるという。なんとなく万能みたいで逆に疑いたくなってしまうが、運動をすると体だけでなく心も爽やかになるからホンマだと信じておこなうことにしている。お金もあんまりかからんし。