「きれい」を使わず花の美しさを表現できる?「語彙力」を増やす3つの方法

思いや考えていることが「言葉」でうまく伝えられない――。そんな悩みを抱えるあなたのために、フリーアナウンサー・馬場典子さんの著書『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』(あさ出版)から、アナウンサーが実際に使っている「話し方のテクニック」を連載形式で紹介します。あなたの言葉と心が、もっと相手に伝わるようになりますよ。

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なぜ語彙力が大切なのか

アナウンサー試験の途中、「きれいという言葉を使わずに、花の美しさを表現してください」というお題が出ました。華やか、良い香り、芳しい、鮮やか、可憐......。みんなが、少しずつ言葉を出し合いました。選ぶ言葉によって、バラ、百合、かすみ草など、思い浮かぶ花は異なります。

日本語は、気象に関する言葉が他の国よりも多く、特に雨に関する言葉が多いことはよく知られています。これは、日本人の生活が雨と深く関わりがあるためですが、日本人にとって、雨は「ただ空から降ってくる水」以上に意味を持つもので、語彙の数だけ、雨の数があり、細かな違いを認識できているということです。

つまり、語彙力が豊かということは、繊細な違いを認識できる感性と、その違いを的確に表現できる能力が、豊かだということになります。

そのため、語彙力が豊かだと、細かなニュアンスやディテールも伝えやすく、共有しやすくなります。

ちなみにニュースや情報番組の打ち合わせでは、事実確認や細かな言い回しなどがメインになりますが、バラエティ番組では、方向性やスタンスなどの確認も多いため、打ち合わせでも本番でも、より語彙力が試される気がしています。

読書家じゃなくても語彙力を磨ける方法

読書をすれば、著者の語彙力にあやかれるし、音読すれば、言葉がより身につくわけですが、読むのが遅くて読書家なわけでもなく、作文が得意なわけでもなかった私でも、次のことを実践して、語彙力がついてきました。

1.あえて制限を設ける

天気予報は、朝・昼・夕方・夜、と一日に何度もありますが、なるべく、人と同じことを言わないように気をつけていました。晴天が何日も続いたときなど、いよいよ本当にネタ切れになるのですが、それでも意地で、絞り出しました。

ネタを足で稼ぐほかにも、歳時記をめくり、辞書をめくりました。実際に使うネタや言葉は一つでも、調べる過程で触れた言葉は財産になります。

また、10秒に収めるための試行錯誤は大変でしたが、時間の制限があることで、言葉を吟味すること、時間内に収まる言葉や言い回しを探すことにつながりました。

さらに、今の今まで知らなかった言葉でも、意味を理解するだけでなく、使いこなさなくてはなりません。意味とともに実用例を学び、何度も下読みするうちに、前から知っていた言葉かのように話せるようになりました。

制限をかけることで、言葉を仕入れる必要に迫られる。そのとき、調べるだけでなく、実際に使ってみることで、実践的な語彙力が身につきます。

ちなみに、LINEのグループトークなどでもこの職業病が出るので、なるべく、他の人より早くお返事するようにしています。もし出遅れてしまったときは......スタンプで誤魔化すこともありますが(笑)。

2.最初に浮かんだ言葉は捨てる

これは、読売新聞の記者のお言葉で、記者として、ご自分に課していたことだそうです。最初に浮かんだ言葉は、誰でも簡単に思い浮かべる言葉。すでに誰かが使っていることも多い。だから、捨てる。

誰もが思い浮かべる言葉を捨て、誰にも届く言葉を探す。単に違う言葉を探すのではなく、よりふさわしい言葉を探す。その苦労は、想像に難くありませんが、こうした〝縛り〟があるほうが、「必要は発明の母」となり、語彙力を鍛えてくれるようです。

ちなみに私はごはんを食べているとつい、どう美味しいのかをあれこれ喋り続けているようです。より相応しい表現を探して、『この言葉だ!』『この表現だ!』としっくりくるまで続きます。友だちに笑われて気付いたのですが、これも職業病かもしれません。

3.手紙を書く

「手紙を書くのはいいよね。書き言葉には、話し言葉にない格式があるだろう」と徳光和夫さんがおっしゃっていました。

話す場合と異なり、一方通行のため、より言葉や構成を吟味する必要もあります。

「拝啓」には尻込みしてしまうかもしれませんが、はがき一葉やメッセージカードなら、書く機会を増やせそうです。

子どものころはよく、母の書いたはがきをポストに出すお使いをしていたのですが、道中に見る〝大人の言葉〟は刺激的でした。

実家のテレビ横には辞書があり、知らない言葉の意味を聞くと、「自分で調べなさい」と言われたことも今となっては感謝です。

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「きれい」を使わず花の美しさを表現できる?「語彙力」を増やす3つの方法 021-shoei.jpg7章からなる本書では、著者がアナウンサー研修で実際に学んだトレーニングのほか、「話し方の心・技・体」という3つテーマで実践的な技術が学べます

 

馬場典子(ばば・のりこ)

1974年、東京都生まれ。フリーアナウンサー。1997年日本テレビ放送網株式会社にアナウンサーとして入社し、報道からバラエティ、スポーツまで幅広く番組を担当。2014年6月末に日本テレビを退社、フリーアナウンサーとして活躍中。2015年4月より大阪芸術大学放送学科アナウンスコースの教授を務める。

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『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』

(馬場典子/あさ出版)

思いや考えが言葉にするとうまく伝わらない――。そんな悩みを解決してくれるコミュニケーションスキルアップ本。言葉遣い、ニュアンス、間、表情などアナウンサーの「話し方」のテクニックを分かりやすく解説。なぜアナウンサーの言葉は伝わりやすいのか、その理由が必ずあなたに“伝わり”ます。

※この記事は『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』(馬場典子/あさ出版)からの抜粋です。

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