「完全メシ」と「白湯」のヒットの共通点。時代の変化とネーミング【高くても売れる秘訣】

「白湯」という言葉をパッケージに入れてヒット

「健康に意識高くない」層の「自分メンテナンス意識」に刺さってヒットしたのが「完全メシ」であれば、「意識高い」層に刺さってヒットした商品もあります。

それが、アサヒ飲料から2022年11月に発売された「アサヒ おいしい水 天然水 白湯(さゆ)」です。

そもそも白湯とは、水を一度沸騰させたあと、飲みやすい50℃くらいに冷ましたお湯のことです。とくに朝、起きぬけに飲むと胃腸全体が温まり、血行促進や消化・便通に良いという話を聞いたことがある人も多いと思います。

ペットボトルの白湯を売るという「天然水 白湯」のアイデアを初めて聞いたとき、目の付け所がすごいと感じました。

出勤前の忙しい朝は、お湯を沸かして白湯を作る時間すらないこともよくあります。そんなときにコンビニのホット飲料コーナーで「白湯」を売っていたら、白湯を習慣化している人はもちろん、なんとなく白湯の健康効果が気になっていたという人も、買ってみたくなるだろうと思ったからです。

しかし調べてみると、実はアサヒ飲料が白湯を開発したのは今回が初めてではありませんでした。2014年に「アサヒ 富士山のバナジウム天然水 ホット」という商品を発売していたのです。

当時は「白湯」とは打ち出さず、「ホットの天然水」という位置づけだったそうです。残念ながらこの商品は、薬を常飲している層や、冷たい水を飲まないといった層にしか響かず、売上が伸びなかったため定番商品にはなりませんでした。

時代の変化が白湯を後押し

ところがここ数年の「自分メンテナンス意識」の高まりから、「白湯」という言葉の認知度は大きく変わります。アサヒ飲料のプレスリリースによると、2009年には白湯を飲んだことがあるという人は11.8%ほどだったのが、2022年には61.0%と、約5倍になっていたとのこと。

しかも女性だけではありません。男性の飲用経験率も54.4%と半数以上に伸びています。そのことから、男女の区別なく幅広いターゲット層に向けて訴求できると考え、今回の開発に踏み切ったといいます。

ボトルのデザインも、「富士山のバナジウム天然水 ホット」と「天然水 白湯」では大きな違いがあります。

それは、前回は商品名に入れていなかった「白湯」というキーワードを、前面に打ち出したパッケージにしたことです。

こうしたアサヒ飲料の狙いが当たり、2023年4月末までの累計販売本数は当初の販売計画の約3倍を記録するヒットに。

「ずっと発売してほしいと思っていた」「ノンカフェインで助かる」「シンプルにおいしい」「夏場でも販売してほしい」などの口コミも数多く寄せられたといいます。

2023年9月には、中身が冷めにくい不織布素材の保温ラベルを採用した形にリニューアル。温かさが長持ちするようになりました。

 

川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC 賞など受賞歴多数。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポー ト、広告・広報アドバイザーなどもつとめる。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(いずれも角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『江戸式マーケ』(文藝春秋)、『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(SB 新書)など多数。

※本記事は川上徹也著の書籍『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』(SBクリエイティブ)から一部抜粋・編集しました。
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