【便秘外来医が紹介】腸のねじれをゆるめる便秘対策「腸ゆらしマッサージ」

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『快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識』 (水上 健/KADOKAWA)第2回【全8回】

テレビや雑誌などに多数出演する便秘・IBS(過敏性腸症候群)分野の第一人者・水上 健医師によれば、最近はリタイヤ後に便秘になる男性が増えているそうです。そうした患者の中には、下剤を服用しすぎたことで腸がダメージを受けたり、腸内環境や食事にこだわりすぎて便秘対策に疲れ果てている方も多いのだとか。先生が便秘外来で多くの患者の診療にあたることで分かった真実と、最新データに基づく正しい知識をまとめたのが書籍『快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識』(KADOKAWA)です。今回はこの本の中から、30年来の便秘が治ったという報告もあったという「腸ゆらしマッサージ」についてご紹介します。

※本記事は水上 健著の書籍「快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識」から一部抜粋・編集しました。

「腸ゆらしマッサージ」がきりひらく新しい便秘対策

便秘によいといわれていることをしているのに、便秘がよくならない。

このような場合は、「ねじれ腸」や「落下腸」の可能性を疑ったほうがいい、とこれまでお伝えしてきました。

便秘の原因には、生活習慣やストレス、自律神経やホルモンバランスの乱れなど、さまざまな原因があります。

いくつも便秘の原因があるのに、アスリートはまず便秘になりません。そして便秘外来にアスリートはいらっしゃいませんが、スポーツをやめた元アスリートは多くいらっしゃいます。スポーツをやめると、アスリートも普通の人のように便秘になります。そして、彼らが運動を再開すると速やかに便秘は解消します。

すなわち「運動は便秘の七難隠す」といってもいいほど、運動は便秘対策に重要なのです。

便秘対策の研究は多数ありますが、もっとも信頼性のある便秘対策は運動です。もちろん便秘になりやすい、なりにくい、といった遺伝や体質など先天的な要因もありますが、便秘の最大要因は運動不足なのです。

日本人の約8割がねじれ腸、落下腸です。けれども、全員が便秘ではありません。運動しているか、していないかは、便秘になるか、ならないかに大きくかかわっているのです。とはいえ、誰でもすぐに、継続できる運動を始めることができるわけではありません。急に運動をすればひざや腰を痛めることも多いでしょうし、お年を召された方にはなおさらです。ひざや腰を悪くすれば治るまで運動できなくなりますから、もっと状態が悪くなってしまいます。

また便秘中はなんとなく気分も晴れないので、「便秘になったから運動するぞ!!」という気持ちになりにくいものです。

そこで私が考案したのが、ねじれ腸や落下腸が原因の便秘を解消するための、腸をゆらして行う「腸ゆらしマッサージ」や「落下腸マッサージ」です。

このマッサージには、運動をしたときにお腹の中の腸がゆれるのと同じように大腸をゆらすことで、腸のねじれをゆるめます。落下腸の人たちは通常の運動では便秘改善効果はありませんが、フラダンスやベリーダンスなど骨盤内がよくゆらされる運動が有効なことがわかってきているので、骨盤の中を持ち上げてゆらす動きを取り入れました。

どちらのマッサージにも便がねじれに引っかかりにくくするという働きがあり、便の通過をスムーズにしてくれます。

これまで内視鏡検査を行うとき、ねじれ腸や落下腸の患者さんに内視鏡を挿入するのはとても大変でした。そこで私は内視鏡をスムーズに挿入するため、患者さん自身にお腹を圧迫してもらって腸の形を整えるように手伝ってもらっていました。すると、ねじれた部分がゆるみ、内視鏡を奥まで入れやすくなったのです。お腹を押さえることで、ねじれている部分にスムーズに内視鏡が入っていくならば、同じことをすれば便が出てくるのではないか。

「腸ゆらしマッサージ」「落下腸マッサージ」はこのような腸の現象を応用して考案したのですが、検査のときにお腹を押してもらった便秘患者さんに試してもらったところ非常に効果がありました。

そして、テレビや雑誌で紹介したところ、「これまでよくならなかった便秘が治った」などといった多くの反響をいただいたのは前述の通りです。

さらに落下腸に関していえば、テレビ番組の実験で落下腸の方を逆立ち状態でレントゲン撮影したところ、落下した腸が押し上がることを示すことができました。

つまり、

・落ちている腸は骨盤の底にくっついているわけではない
・ちょっとした刺激で腸が移動する

ということで、落下腸の人には、「腸ゆらしマッサージ」に加えて、腸を持ち上げる「落下腸マッサージ」を行ってもらうように指導しました。こちらについても、ほとんどの落下腸の患者さんたちから、便秘が劇的に解決したとの報告を受けています。

ねじれ腸も落下腸も生まれつきのものなので、残念ながら腸の形自体は変わりません。しかし、マッサージを行うことで一時的に腸のねじれた状態をゆるめたり、腸を持ち上げたりすることで便秘が解消でき、便秘が解消すれば腸が短くなって便秘をしにくくなります。まずはマッサージを始めて、よいスパイラルをつくりましょう。

 
※本記事は水上 健著の書籍「快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識」から一部抜粋・編集しました。
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