【ブギウギ】ちりとてちん、ゲゲゲ、らんまん...名作朝ドラにも見られた物語終盤の「重要な変化」に注目

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毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「主人公の立ち位置の変化」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【ブギウギ】ちりとてちん、ゲゲゲ、らんまん...名作朝ドラにも見られた物語終盤の「重要な変化」に注目 pixta_82033293_M.jpg

趣里主演の朝ドラ『ブギウギ』第22週「あ~しんど」が放送された。

今週はスズ子(趣里)のモデルとなった笠置シヅ子の歌手としての一つの到達点『買い物ブギー』誕生の背景と、スズ子の歌手としての立ち位置、ステージの変化が描かれる。

「ブギの女王」となって人気絶頂のスズ子のもとに家政婦・大野(木野花)がやって来て半年。愛子(小野美音里)は大野にすっかりなつき、家族のような関係になる一方、スズ子はこれまで以上のヒットを求められるように。

そんな中、不穏なニュースが次々と舞い込む。タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)は足の激痛で公演を中止。また、村山トミ(小雪)が亡くなったという連絡が入り、スズ子と愛子、山下(近藤芳正)は大阪へ行って葬儀に参加するが、東京へ戻ると山下はマネージャーを辞めたいと切り出す。愛助(水上恒司)に続いてトミも亡くなったことで、心の糸が切れたという山下は、自身の後任として甥のタケシ(三浦りょう太)を連れて来る。

しかし、タケシは何かと要領を得ず、現場で居眠りしたり、寝坊で遅刻したり。自分はクビになるだろうと諦め半分のタケシだが、大野に背中を押されたことで、本番直前にスズ子のもとへ行く。そして、嘘やごまかしなく正面から謝罪すると、それをスズ子が受け入れ、最高のパフォーマンスを見せる。スズ子は、自分がこれまでいろいろな人から教えてもらったことを、今度は自分が教える番だと伝えるのだった。

今週は、ゲス記者・鮫島(みのすけ)の他にほとんど悪人が登場しない本作らしい週だった。

1つはスズ子と恋人の母との関係性。史実では、トミのモデルとなった吉本興業創業者・吉本せいは最後まで笠置について「何も知らない」と言い、何も語らなかったとされるが、『ブギウギ』の中ではこっそりとスズ子のレコードを集め、スズ子が出演した映画を観に行っていて、それが周囲にはバレバレだったという微笑ましいエピソードにアレンジされている。

もう1つは、仕事でも私生活でもスズ子と二人三脚で歩み、支えて来てくれたマネージャー・の山下の人物像。史実では山下のモデルとなったマネージャー・山内義富は笠置シヅ子のお金を使い込んでクビになったというが、どのように退場させるのかと思ったら、若い世代へ引き継ぐための「世代交代」として、そこにスター・福来スズ子の「育成される側から育成する側」への立ち位置の変化を絡めるという巧妙な描き方になっていた。

朝ドラも終盤に来ると、主人公が「育成側にまわる」「次世代に引き継ぐ」ターンが描かれることは多い。

特に2000年代後半からその傾向は増えている気がする。例えば『ちりとてちん』(2007年度下半期)では主人公・喜代美(貫地谷しほり)が落語家から「一門のおかみさん」となり、草々(青木崇高)の一番弟子で何でもソツなくこなせる一見優等生の嘘つきキャラ・木曽山(辻本祐樹)に振り回される様子が描かれた。

『ゲゲゲの女房』(2010年度上半期)では晩年、茂(向井理)の弟子たちが成長していったr一方、最終回では主人公・布美枝の父・源兵衛(大杉漣)の葬儀にきょうだいや子どもたち、孫たちが集まり、大勢で賑やかな家族の物語がずっと続いていくことが示唆された。

『カーネーション』(2011年度下半期)では、主人公・糸子(尾野真千子)は、自分と同じ道を歩み、華々しい活躍をする娘たちに嫉妬を抱きつつ、病院でのファッションショーをしたり、近所のあほボンたちの世話を焼いたり、リフォーム教室をやったりと、自分の道を模索し、その死後にはみんなが集まるサロンができ、"みんなのお母ちゃん"として生き続けた。

記憶に新しいのは、前作『らんまん』。槙野万太郎(神木隆之介)のもとに弟子・虎鉄(寺田心→濱田龍臣)が現れ、各地から植物標本が集まって来て、さらに万太郎の遺品整理を娘・千鶴(松坂慶子)やアルバイトで来た紀子(宮﨑あおい)が行い、植物標本を次世代に手渡していく流れが描かれた。

そうした名作を挙げてみると、山下がやる気ゼロの自分の甥をスズ子に押し付け、「これからの人と仕事をすべき」と言うのは少々都合が良い気もするし、そもそも歌手で女優のスズ子が育成すべきはマネージャーではなく、後進の同業者じゃないかという気もしなくもない。

とはいえ、小さなツッコミどころはいろいろありつつも、なんとなくふんわり良い話に着地させていくのが『ブギウギ』らしいところ。物語がいよいよ終盤であることを否が応でも感じさせてくれる第22週だった。

文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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