新しい服を買って出かけてみる。努力ゼロで見た目から元気に。/自分を好きになろう

双極性障害の治療後、長く続く抑うつ状態と向き合ってきた筆者。ネガティブな世界からのサバイバルをあと押ししたのは、意外にも簡単な7つの「行動」でした。2ヶ月ぶりの換気、10秒片付けからはじまる、抑うつ状態への行動療法、認知療法的アプローチの実践と記録に、「自分を好きになる」ためのヒントを探してみましょう。

※この記事は『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』(KADOKAWA)からの抜粋です。

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【前回までのあらすじ:2章】
記者として東日本大震災の被災地取材を続けるうちにうつ病を発症。
のちに双極性障害の診断を受けて、2年間の休職と投薬治療後、社会復帰を果たした筆者。
喜びや悲しみ、意欲などの感情を取り戻すことはできないもどかしさを抱えながら、まずは部屋の片付けに着手。「自分は変われる」ことに気づくことができました。

 

努力ゼロで、見た目から元気になる

タンスの中を見直すと、着古した黒いセーターや、土色をしたワンピース、だぼっとしたグレーのパーカなどがすぐ目に入ってきました。

そして自分に問いかけました。
「これは、元気な人が着そうなオシャレな服だろうか?」
答えは即座にNOです。

私は片付けを通じて、本や食器や家具は「好きなもの」を残したのですが、服に関しては「着ていてラクなもの」を残していたことに気がつきました。

では、元気な人はどんな服を着ているだろう? 次に私はそう考えました。

・元気な人は明るい色の服を着ていると思う。
・それから、清潔感があって、よれよれしてない。
・季節感のある装いで、TPOをわきまえている。

タンスの引き出しをすべて開けて、そんな条件に合う服を探しました。
ようやく、タンスの中からミナ ペルホネンのスカイブルーのシルクのスカートを引き出して、「このぐらいかなぁ」とひとりごとを言いました。

これに合うトップスって、白いカーディガンとかだろうか。
ちょっと探して買ってみよう。安いもので十分だし。

さっそくネットを立ち上げて、Amazonで白いカーディガンを買いました。
ボタンがビジューになっているキラキラしたものです。
普段の自分は絶対選ばないようなちょっと華やかなタイプのカーディガンでした。

翌日、服が到着しました。
それまで着ていたこげ茶色のジャージを脱いで、スカイブルーのスカートと合わせて白いカーディガンを着て、鏡の前に立ってみました。

「おお......! なんか、講演とかしてそうな前向きで元気っぽい人に見える......! 服だけは」

白いカーディガンを着ると、顔色が少しよく見えました。
服を明るい色に変えただけでいきなり元気な人に見えるのです。
自分の努力ゼロで、こんなに変われるんだと、驚きました。
でも、新しい服にノーメイクの顔とぼさぼさの頭はまったくもってミスマッチで、鏡に映る自分を見て、思わず笑ってしまいました。

「久しぶりに、眉カットもしてみよう」
眉カットのついでに、お風呂に入って髪を洗って乾かして、改めて買ったばかりの服を着て、メイクをしてみました。
まあ、これまで惣菜弁当ばっかり食べて不摂生したし、ちょっと太っておなかも出た。けど、
「割とまだまだ見られるじゃん、自分」
鏡を見ながら、そんなことをふと思ってしまいました。

自分を「まだまだ見られる」なんて、肯定的にとらえることができたのは久しぶりでした。

特に外出の用事もなかったのにフルメイクをしてしまったので、何かもったいない気持ちになり、自宅から歩いて行けるバーに行きました。

 

「あれ? なんか今日違うじゃん」
私を見るなり、バーのマスターがそう言ってくれました。
「どうしたの? これから合コンとか? もしかしてデート?」
「いや、何もないよ。飲みに来ただけ。なんで?」
「だって、オシャレしてるじゃん! 化粧した映里ちゃん見たの久しぶりだよ。化粧しなよ! かわいいんだからさ」
「あはは」
「服もいいじゃん。そういうの似合うよ。でもどうしたの? いきなり変わっちゃって」

その晩は、バーのマスターや近所の常連さんが、私の服やメイクを口々に褒めてくれました。そして「元気になってよかったね」とみんなが言うのです。

いつも「自虐的」と言われる私ですが、褒められて悪い気はしません。というか、かなり嬉しかったです。

そうか、努力ゼロで、服の色を変えるだけでこんなに褒めてもらえるんだな。すごくいいな。

 

次の記事「外側を変えればまわりの反応が変わる。そして自分の考えも変わる。/自分を好きになろう(11)」はこちら。

 

 

岡 映里(おか・えり)

作家。1977年、埼玉県三郷市生まれ。職を転々としながら、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。のち、Web開発ユニット起業、会社員、編集者、週刊誌記者などの仕事を経る。2013年、双極性障害と診断され休職、離婚などを経験。2年間の治療を経て2015年に症状が落ち着く。以後も続いたうつ状態を、行動療法、認知療法的な視点から改善。

 

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
漫画家。1980年北海道札幌市生まれ。2004年、月刊アフタヌーンで四季大賞を受賞しデビュー。エッセイも発表している。

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』

岡 映里[著]・瀧波ユカリ[漫画]/KADOKAWA)

双極性障害の診断を受け、休職して2年間治療に専念。その後、長く続く抑うつ状態に向き合った筆者がたどり着いた、「行動」による回復の軌跡をたどるエッセイ。片付け、おしゃれ、筋トレなど、うつな思考回路から解放されるためにトライすべきことがわかる一冊です。

この記事は書籍『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』からの抜粋です
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