明るい未来が見えない? 冷蔵庫を見直すと「変化のカギ」が手に入る/家族を救う片づけ

「今日こそ片づけよう」そう一大決心して部屋の片づけを始める人は多いはず。しかしなかなかスムーズに進まない...。もしかするとあなたが片づけられない理由は、片付け技術ではなく「心」の方にあるのかもしれません。

人気の空間心理カウンセラーが書き下ろした不思議な片づけ物語は、読むだけであなたの心を「片づけられる人」に変えるかも! 可愛い毒舌フェニックスによる「心も片づく魔法」にあなたもかかってみませんか?

※この記事は『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(伊藤 勇司/KADOKAWA)からの抜粋です。

 

「誰か......誰か助けて!!
 お願い! ここから出してー!
 あっ、そこのあなた!
 突っ立って見てないで、
 ここから私を出してーーー!!」

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「うわあああ~!!」

悲鳴をあげながら飛び起きると、私はベッドの上にいた。ホコリまみれの薄汚い牢屋に閉じ込められていたのは、どうやら夢だったようだ。
「よかった......夢だった............」
ほっとしながらも、額から汗が流れている。
「さっきの夢、リアルすぎる......。それになんだか意味深だなぁ......」
そう思った私は、枕の横に置いてあったスマホで検索を始めた。
「『牢屋に閉じ込められている夢 意味』と......」

検索して出てきた意味は、まさに今の私を象徴していた。

 

牢屋に閉じ込められている夢を見たあなたの深層心理は、自由を求める欲求が強く、なんらかの現象から解放されたいという願望が夢として反映されています。

こういう夢のほとんどは、心理的な抑圧や不自由感、拘束感などを表しています。自分の本心や素直な気持ちを抑えていたり、誰かに束縛されたりと、特に家庭や職場環境などでの抑圧や、束縛感を感じてはいないでしょうか。......

「これって私の今の状況そのままじゃない......」

一見すると平凡で幸せに見える我が家だが、いつでも小さな問題が山積みだ。

夫は営業マンとして今の会社に転職して5年目を迎えたところで、毎日子どもたちが起きる前に出て行っては、夜は終電近くになることもしばしば。休日は疲れて寝ていることが多いので、子どもたちにはもちろん、私にとってもどんどん存在が薄くなってきている。

中学1年生の息子は、不登校で家に引きこもり中だ。部屋から出るのは、食事かトイレの時ぐらいという状態がもう3か月近く続いている。そんな息子とは対照的に、小学4年生の娘は明るくてしっかりしているけど、最近はなぜかワガママを言って私を困らせることが多くなった。

そして私はというと、主婦業の傍ら、週3回、スーパーでパート勤務をしている。
レジの仕事は嫌いじゃないけれど、ここ2週間ほどは毎日来るクレーマーのお客様に目をつけられたらしく、必ず私がいるレジに並んでは、何かと難癖をつけていくのが辛かった。店長にそれとなく相談しても、
「ああいうお客さんは相手しちゃダメだよ~! 適当にあしらって!」
などと言われるだけなので、仕事に行くのが気が重い。

さらに最近、以前から興味があったボランティア活動を始めたのだが、人間関係に馴染めず、こちらも気乗りしないままやめるわけにもいかず......という状態。

 

そんな日々を送っているうちに、徐々に私は思うようにいかない家族へのイライラが止まらなかったり、気分がどん底に落ち込んだりする日が多くなっていった。

日によって波があり、最近は体に不調をきたすようにもなってきている。朝、一通りの家事をやって一度休もうとソファに倒れ込むと、そのまま夕方まで起き上がれないなんて日も多い。

もともと家事がそれほど得意なわけではないけど、私がやらなければほかに誰もやってくれる人がいないので、家はどんどん片づかなくなっていく。それでも家族はみんな自分勝手に散らかし放題のため、私は常にイライラしっぱなしだ。

そしてそんな、周りに怒りをぶつけてばかりの自分に落ち込む日々だった。
実を言うと今日のような夢を見たのは、一度や二度の話ではない。ここのところずっと、同じような悪夢にうなされ続けていた。
「はあ......。いつまでこんな状態が続くんだろう」
漠然とした不安と不満だけが募り、明るい未来がまったく見えない毎日だった。

今朝も息子はまだ起きてこないので、娘に朝食を食べさせ、小学校に行くのを玄関で見送る。それからキッチンに戻るわずかな時間に、ついスマホをチェックするクセがついてしまった。

SNSを開くと目に飛び込んでくる、ママ友や同級生の幸せそうな投稿を見ると、いつもうらやましくてモヤモヤする。イヤなら見なければいいのに、と自分でも思うけど、それでも見ずにはいられない。
「ほんと、うざいなあ。何よ! いつも、いつも、幸せをアピールするような投稿ばかりして。誰もあんたのことなんて、見てないっつーの!」
まだイヤな夢を見たストレスを引きずっているせいか、ついついひねくれた心の声が言葉に出る。

ダイニングキッチンに戻ると、わかってはいるが息子が朝食の席に座っているはずもなかった。
「マモルー、いいかげんに起きて、ごはん食べなさい!」
「なぁん」
代わりに飼い猫のポン太が答えてくれた。さっきあげたキャットフードを食べ終えたのだろう。満足そうにペロペロと毛づくろいをしている。
「ポン太だけはママの味方よね」
と抱き上げようとすると、するっと逃げ出しさっさとどこかに行ってしまう。

ポン太はなぜか娘ののぞみに一番懐いているのだった。いつもポン太の世話をしているのは私なのに......。ペットにすら認めてもらえないように思えて、また落ち込みそうになる。

どんよりした気持ちを奮い立たせて、ため息をつきながらシンクに積み上がった食器を洗い始めた。昨夜は疲れて早めに寝てしまったので、朝食分のお皿だけではなく夕食の食器や汚れた鍋などもそのまま残っているのが、本当におっくうだ。

なんとか洗い終えたが、今度は水切りかごに山盛りになる。ここで几帳面な人はお皿を拭き上げて棚にしまうんだろうなあと考えながらも、そこまではできない。
「あっ、そうだ! 今日は卵の特売日だった。買い出しに行かなきゃ!」

代わりに、数日前に近所のスーパーでチラシをチェックしていた特売情報を思い出した私は、すぐにそちらに頭を切り替えた。
私はスーパーで勤務していることもあって、特売情報にはとても敏感だ。いかに商品を安く買えるかに命をかけていると言ってもいい。そそくさと出かける準備に取りかかった。

無事に開店とほぼ同時にスーパーに入り、目当ての卵を安く買えた私は、先ほどとは打って変わって気分よく帰宅した。
「ただいまー」
私は鼻歌を歌いながら、そのままキッチンへと向かった。
「さてと。さっそく卵を冷蔵庫にしまいますか」
そう独り言をつぶやきながら、冷蔵庫の扉を開ける。
「うわっ、もう冷蔵庫がパンパンじゃない。整理しなくちゃ新しいものが入らないよ......」

特売品に目がない私は、安い商品を見つけるとついつい「買わなきゃ損!」と思ってしまい、衝動的に物を買ってしまう。だからいつも冷蔵庫がいっぱいになってしまうのだ。
「これ、賞味期限切れてるよね......。うわ、このトマト、もう腐ってる......」

こうして冷蔵庫で賞味期限切れのものを見つけるたびに、「安物買いの銭失い」という言葉が私の頭をよぎる。安く買うことで満足してしまい、買ったものを使いきれていないことは、自分でもわかっていた。

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「あっ、こんな奥に、まだ使ってない卵もあるじゃん! 私ったら、もう......」

卵が半分以上残っていたパックを取り出すと、その中の一つにヒビが入っているのに気づいた。

「あーあー、割れちゃってるよ......」
そう思って、ヒビ割れた卵に手を差し伸べようとした次の瞬間。
カタカタ、カタカタ......
なんと卵が、小さく揺れ始めた。

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「えっ!?」
いきなり動きだした卵に動揺した私は、その場で固まりながらも、微振動を続ける卵に釘づけになった。すると......。
パリパリパリ............
卵の殻が、音を立てて破れていく。
「えっ、何なに!? どういうこと!?」
パリリ......パカッ......!

ついに卵が割れると、私は思わず、
「ええーっ!!」
と叫んでしまった。

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なんと卵の中から、小さなヒヨコが出てきたのだ。
「も、もしかしてこの卵から生まれたの!?」

市販の有精卵を温めると孵化(ふか)することがあるとは聞いたことがあったけど......っていうか、有精卵を買った覚えもないし、何よりいつ入れたのか忘れたほど冷蔵庫に入っていたのに!?

びっくりしたが、とはいえ滅多に見ることができない光景を見ることができた私は、うれしい気持ちの方が勝り、思わずヒヨコを手に乗せた。
しかしその後、すぐに信じられないことが起こった。

「こら! 気安くフェニックス様に触るな(怒)!!」
手のひらの上のヒヨコが、突然怒りをあらわにしながら私に話しかけてきた。
「!?」
いよいよ私も、幻聴が聞こえるまでになったのか?
「いや、今のは気のせい気のせい......。それにしてもヒヨコちゃん、かわいいなぁ」
そうやって、ヒヨコの頭をなでようと手を伸ばすと......。

「だから、ヒヨコじゃなくて、フェニックスだってば(怒)!!!」
今度は明らかにヒヨコが私と目を合わせ、話しかけていることが確認できた。しかも、さっきよりも怒りに満ちた表情をしている。

状況がのみ込めないまま、私は言葉も出ずその場で立ちつくした。
しかしその時、気配を感じて足元を見てみると、ポン太が今にもヒヨコに飛びかかる体勢になっていた。
「うわっ! 猫! やめろ! 助けて!」
と言いながら、ヒヨコが私に飛びついてきた。

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突如、目の前で生まれた「自称・フェニックス」のしゃべるヒヨコ。
まさか、これからこの小さな生き物が私たちの家族全員の人生を救うことになるとは、この時はまだ知るよしもなかった。

◇◇◇

冷蔵庫を見直すことで変化のカギが手に入る

フェニックスは世界中で親しまれている伝説の不死鳥。何度でも蘇(よみがえ)るその特性から、復興や再出発、不屈の心を表す象徴とされることが多い存在です。冷蔵庫の卵から、フェニックスが生まれてくる。そんなことが実際に起こったら、あなたはどうしますか?

僕は空間心理カウンセラーとして、「その人の部屋から深層心理をひも解き、部屋と心の片づけをすることで人生を整える」というサポートをしています。

最近ではよく言われるようになりましたが、部屋には、住んでいる人の心の状態がダイレクトに現れます。ですから、部屋を見て、ご本人すら気づかない心理的な問題を浮かびあがらせたり、また逆にご本人が自分の本当の気持ちに気づくことで、自然と部屋が片づいていったり、といったことができるのです。

人間は完璧な生き物ではないので、失敗したり、間違ったり、紆余曲折を繰り返しながら成長していきます。そうはわかっていても、失敗や挫折によって、自分を責めて悶々(もんもん)と過ごしてしまうことがありますよね。

これが個人のみならず、「家族」という集団になると、より複雑になってしまいます。
こうして生まれる「心の停滞感」が、部屋が片づかない現象を引き起こしているとすると、あなたやあなたの家族の心は今、どんな状態にあると感じますか?

先ほどのプロローグでは、冷蔵庫の中からフェニックスが生まれてきました。実はこの日常生活でひんぱんに活用する冷蔵庫という場所は、使っている人の「心のクセ」をひも解いていく上で、非常に重要な場所でもあります。人生を好転させるカギを握っている場所であるとも言えるでしょう。

本書は、フェニックスという伝説の生き物をキャラクターに据えて物語を描いていきますが、この中のエピソードのほとんどは実話をもとに構成しています。

主人公ユウコさんのモデルになった方も、実際に冷蔵庫を見直すことから人生の流れが好転していき、バラバラになりかけていた家族の歯車が「元通りに復活する」ようになっていきました。

人生とは、ほんの些細なことがきっかけで、うまくいかなくなることがあります。しかし逆もしかり。些細なことがきっかけになって、人生がどんどん好転していくこともあるのです。

 

人はどんな状態からでも「復活」することができます。
心さえ死んでいなければ、いつからでも、どんな環境でも、何歳からでも、人はどこまでも輝くことができる。それを僕は現場を通して、何度も味わってきました。

もちろん、あなたも、あなたの家族も例外ではありません。
より豊かな人生は「心の輝き」から生み出されていきます。そして、心が前向きになるからこそ、部屋を片づけるための一歩踏み出す力が湧き上がってくるのです。

 

次の記事「片付かないあなた。自分の気持ちより他人の気持ちを優先していない?/家族を救う片づけ/家族を救う片づけ(2)」はこちら。

 

 

伊藤 勇司 (いとう・ゆうじ)

片づけ心理研究家。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。引っ越し業で働きながら、心理学を学ぶ中で「部屋と心の相関性」に着目し、現場で見た1000 軒以上の家とそこに住む家族や人との関わりを独自に研究。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008 年に独立。主な著書に『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(KADOKAWA)、『部屋は自分の心を映す鏡でした。』( 日本文芸社)、『片づけは「捨てない」ほうがうまくいく』( 飛鳥新社)、『座敷わらしに好かれる部屋、貧乏神に取りつかれる部屋』(WAVE 出版)、『空間心理カウンセラーの「いいこと」が次々起こる片づけの法則』(三笠書房)等。


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『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』

(伊藤 勇司/KADOKAWA)

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この記事は書籍『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片付け』からの抜粋です

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