病院で教えてくれない「幸せになる方法」は、「自分を大切にすること」。/自分を好きになろう

双極性障害の治療後、長く続く抑うつ状態と向き合ってきた筆者。ネガティブな世界からのサバイバルをあと押ししたのは、意外にも簡単な7つの「行動」でした。2ヶ月ぶりの換気、10秒片付けからはじまる、抑うつ状態への行動療法、認知療法的アプローチの実践と記録に、「自分を好きになる」ためのヒントを探してみましょう。

※この記事は『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』(KADOKAWA)からの抜粋です。

病院で教えてくれない「幸せになる方法」は、「自分を大切にすること」。/自分を好きになろう pixta_45129715_S.jpg前の記事「「できたこと」を認めてほめる。頭の中に警察官ではなく弁護士を。/自分を好きになろう(8)」はこちら。

【前回までのあらすじ:2章】
記者として東日本大震災の被災地取材を続けるうちにうつ病を発症。
のちに双極性障害の診断を受けて、2年間の休職と投薬治療後、社会復帰を果たした筆者。
喜びや悲しみ、意欲などの感情を取り戻すことはできないもどかしさを抱えながら、まずは部屋の片付けに着手。「自分は変われる」ことに気づくことができました。

 

オシャレすると人生が変わる!?

「あとね、映里ちゃん、部屋がキレイになったんだから、今度は自分のこともキレイにしてあげてよ」
「ん?」
「いや、ほら......、ちょっとはっきり言っていい? 今、映里ちゃん、お化粧してないでしょ。髪の毛もずっと切ってない感じだよね。あと、服も、ねこの毛だらけのジャージだし。昔はあれだけ服が好きだったんだから、またオシャレをすると、気分も上がると思うよ」
「オシャレかぁ」
「うん。そうだよ。自分をキレイにしてあげることって、自分を大事にすることだから。自分を大事にしてあげて、もっと」
「大事......、自分を大事にするっていうのがわからない」
「じゃあさ、自分を大事にするのがわからなかったら、人のためにオシャレしてみたら? やっぱ、映里ちゃんが元気でオシャレしてると、周りの人は安心すると思うよ」
「うん。ちょっと考えてみる」
「いろいろ言いすぎたかもしれないけど、でも、ほんとに、やってみてね。弁護士さんとオシャレ、掃除の次はこのふたつを頑張ってみて。絶対楽しくなるからね」

 

友達が帰ったあと、私は途方に暮れていました。
でも、「絶対楽しくなる」なら。今、私はまだ楽しいとは言えない生活を送っている。
確かに、仕事には復帰して、部屋は片付いた。
でも、幸せ感がまるでない。
よく、片付けの本に書いてあるような、掃除をして楽しい、という感覚もない。
まだ、心が死んでるのかな。
とにかく今のままは嫌だ。

確かに、双極性障害の症状で苦しめられていた怒りの感情は消えてくれたけど、でもそれ以外は全然納得できる状態ではない。
いつもぼんやりしているし、やる気が全くない。
どこかに出かけたいとか、何をしたいとかの、意欲が湧いてこない。
そういう生活を一生送るのは、嫌だな。

そして今度はこう考えました。
じゃあ、私は何をしたいんだろう。
・本を書きたい。
・離婚したし、彼に振られたばっかりだけど、けど、また素敵な人と出会って恋をしたい。
・旅行して世界中を見て回りたい。

病気になる前はできていたんだから、今だって、可能なはず。
治るって、そういうことじゃないの? そう思いました。

精神科では、薬で症状を抑えることはしてくれたけど、「幸せになる方法」までは教えてくれませんでした。

これは、薬や病院でなんとかしてくれることではなくて、自分でやらないといけないことなのかもしれないな、そう思いました。

よくわからないけど、今日は友達がそのヒントを置いていってくれたのかもしれません。

騙されたと思って2週間やってみてと友達は言いました。
そうだな、変わらなければやめたらいいんだよね。
そんなふうに気軽に考えてみることにしました。

そう言えば、片付けをはじめる前に「私が考える元気な人」のリストを作って、その中に、「きちんとしたオシャレをしている」と、自分で書いていました。

友達も、「自分をキレイにしてあげて」と言っていたし、次はこれをしてみるか......。

 

次の記事「新しい服を買って出かけてみる。努力ゼロで見た目から元気に。/自分を好きになろう(10)」はこちら。

 

 

 

岡 映里(おか・えり)

作家。1977年、埼玉県三郷市生まれ。職を転々としながら、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。のち、Web開発ユニット起業、会社員、編集者、週刊誌記者などの仕事を経る。2013年、双極性障害と診断され休職、離婚などを経験。2年間の治療を経て2015年に症状が落ち着く。以後も続いたうつ状態を、行動療法、認知療法的な視点から改善。

 

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
漫画家。1980年北海道札幌市生まれ。2004年、月刊アフタヌーンで四季大賞を受賞しデビュー。エッセイも発表している。

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』

岡 映里[著]・瀧波ユカリ[漫画]/KADOKAWA)

双極性障害の診断を受け、休職して2年間治療に専念。その後、長く続く抑うつ状態に向き合った筆者がたどり着いた、「行動」による回復の軌跡をたどるエッセイ。片付け、おしゃれ、筋トレなど、うつな思考回路から解放されるためにトライすべきことがわかる一冊です。

この記事は書籍『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』からの抜粋です
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