50代が「新NISA」で取り組むべき「王道の商品」は? 初心者が知っておきたいたった一つの選択肢

株式の個別銘柄投資は難易度もハードルも高い

投資という場合、最も王道感があるのが、株式の個別銘柄投資だと思います。自分で企業の業績、財務状況、ビジネスモデルなどを分析し、さらには経営者の人となりも調べたうえで、投資すべきかどうかを判断する。まさに投資の王道ですが、これから投資を始める人にとって、数ある上場企業から数社を選び抜くのは、とてもハードルが高いでしょう。

2023年3月31日時点で、東京証券取引所に上場している企業数は、プライム市場が1834社、スタンダード市場が1446社、グロース市場が523社、TOKYOPROマーケットが71社となっています。合計で3874社もあります。

投資が好きな人のなかには、あの分厚い『会社四季報』に全部目を通して、投資する企業を見極めようとする人もいますが、それは長年にわたって失敗を繰り返し、自分なりに投資経験を積んだ人だからできることです。

それに、投資資金がたくさんあれば、30銘柄、50銘柄に分散投資することで、特定の銘柄の株価が大暴落したり、あるいは投資先企業が倒産して株券がただの紙切れになったりするリスクを軽減できますが、そこまでの資金を株式投資に回せる人はほとんどいないでしょう。数銘柄に投資するだけでは、分散投資効果を十分に得ることができず、資産価値が目減りするリスクをかえって高めることになります。

その点、投資信託ならたくさんの銘柄に分散投資しているので十分な分散投資効果を得ることができますし、その銘柄も投資を専門に行っているプロが選んでくれます。

もちろん、何事にも最初はありますから、これから株式投資の経験を積んでいけばいいという考え方もあります。

でも、それはまだ30代、40代くらいの人がいうことです。もう50代になった人が運用をするにあたっては、できるだけ大きな損をしない方法を考えなければなりません。損を取り返す時間がないからです。その意味においても、株式の個別銘柄投資は避けたほうがいいでしょう。

時々、株式のトレードで億円単位の資産を築いた人の話を聞くことがあるかもしれません。何となく「自分にも同じことができるのではないか」という気持ちになるかもしれません。が、それは幻想です。株式投資でそれだけの資産を築ける人は、恐らく100人のうち1人もいないでしょう。

それに、成功するまでに、ものすごい損失を被(こうむ)って「もう株式になんて投資しない」と思った経験を持っている人が大勢います。それでも諦めずに続けられた人だけが、株式投資で大成しているのです。

それを考えると、五十の手習いで資産形成を始める人は、株式の個別銘柄投資には手を出さないほうが無難だと思います。


※健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
※記事に使用している画像はイメージです。

 

中野晴啓(なかの はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 

1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、 2023年6月に退任。

2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHPビジネス新書)他多数

※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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