黒板とチョークの間にある、2つの摩擦の正体/すごい技術

pixta_11183699_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!

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●黒板

黒板と呼ばれているが、今の黒板はグリーンが普通。ところで、表面に字が書けるのはどうしてだろうか。

黒板は明治初期に輸入されたが、その名称は英語の「ブラックボード」の直訳である。実際、昔の黒板の表面は黒かった。昭和の中頃に表面の塗料が改良され、目に優しいグリーンの黒板が採用されるようになった。

チョークで文字が書ける秘密は黒板の表面の構造にある。表面は、ミクロに見ると細かく硬い凹凸からできている。白い粉を固めて作ったチョークをこすりつけると、はがれた粉が黒板表面の凹凸に残る。その白粉が黒板の白い文字になるのだ。このしくみのおかげで、チョークの文字は黒板消しでふき取ることができる。これらは、紙に鉛筆で文字を書き、消しゴムで消せるしくみによく似ている。

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さて、チョークで黒板に書くときには、軽い摩擦(まさつ)の力を感じる。チョークの塊かたまりを粉末にするための摩擦力だが、この力の正体は何だろう。摩擦は接触する表面が付着することによる摩擦[凝着(ぎょうちゃく)摩擦]と、変形することによる摩擦(掘り起こし摩擦)が主な源泉である。チョークと黒板の関係はまさにこの二者の摩擦のしくみを具現化している。チョークと黒板の接触点で、チョークが黒板に付着したり(凝着摩擦)、黒板表面の凸部分から掘り起こされたり(掘り起こし摩擦)することで、文字が書けるのである。

次に、チョークについて調べよう。昔は白墨とも呼ばれたが、石膏(せっこう)製の軟らかいものと炭酸カルシウム製の硬いものとに分類される。当初はフランスから輸入された石膏製が使われていたが、後にアメリカから炭酸カルシウム製チョークが渡ってくると、石灰石を多く産する日本では、この炭酸カルシウム製が主流になった。また、以前捨てられていた貝殻や卵の殻も原料にできるので、炭酸カルシウムは自然にやさしいチョークにもなる。

蛇足だが、愛媛・宮崎・鹿児島の3県では黒板消しを「ラーフル」と呼ぶ。ラーフルとはオランダ語で「こする」の意味だが、どうして3県だけに文明開化以前の言葉が残ったかは謎という。

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。

涌井貞美(わくい・さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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