還暦を超えた「ステープラー」に革命が起きている/すごい技術

pixta_13844640_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!

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●ステープラー

書類綴(と)じの必須文具の一つがステープラーである。日本では「ホッチキス」と呼んだほうが通りがいいだろう。

小型のステープラーが日本で発売されたのは1952年。ホッチキスの商品名を冠されたこの文具は、またたく間に世に広まった。以来、ステープラーという一般名詞よりもこの商品名のほうが通りはいい。

ステープラーの基本的なしくみは、今も昔も変わらない。金属加工でいうプレス加工を専用の針に施しているのである。ドライバーと呼ばれる板の力でクリンチャという金型部分に針が押しつけられ、メガネのような形に曲げられる。こうして紙は綴じられるが、この一連の動作をクリンチと呼ぶ。

従来のステープラーでクリンチされた針はメガネの形をしていた。そのため、書類を綴じて何部も積み重ねると、針の部分だけが厚くなって重ねづらい。

そこで、フラットクリンチ(またはフラット綴じ)と呼ばれる針の曲げ方が人気を呼んでいる。ガイドの金属板を取りつけることで針先がフラットに曲げられるようになったもので、おかげで綴じた書類を何部重ねても、書類を平らに置くことが可能になった。

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ところで、針はどのように製造されるのだろうか。材料となる針金をメッキして針金にした後に、意外かもしれないが、接着剤でくっつけて完成しているのである。クリンチするたびに接着された針が1本1本はがれていくのはそのためだ。

不要書類をリサイクルする際、「ステープラーの針取りが面倒」という嘆きも聞かれる。しかし、鉄針は再生紙をつくる際に邪魔にはならないという。古紙は水に溶かされドロドロになるため、比重の重い鉄は簡単に除去されるからだ。ステープラーの針箱に「ホッチキス針は古紙の再生紙工程で支障ありません」と記載されているものがあるのは、これが理由だ。

普及してから還暦を過ぎたステープラーだが、最近になって革命が起こっている。針のいらないもの、針が紙のもの、そして何十枚も軽く綴じられるものなど、これまでになかった新しいアイデアの新商品が次々と開発されているのだ。

 

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。

涌井貞美(わくい・さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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