遠心力でゴミを分離! サイクロン掃除機/身のまわりのモノの技術(34)【連載】

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サイクロン掃除機の最大のウリはメンテナンスフリーということ。フィルター交換の手間が不要なのだ。また、フィルターの目詰まりがないので、いつまでも吸引力が衰えない。

サイクロン掃除機のゴミ取りの基本は、一緒に吸い込んだ空気を容器の中で強力に回転させ、高速の渦を作ることにある。この渦状の風で遠心力を作り、ゴミを振り落すのである。

遠心力とは物が回転運動をするときに生まれる力である。遊園地のジェットコースターでカーブにさしかかると、体が外側に押し出される力を受ける。これが遠心力である。

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遠心力は重いものほど大きく働く。ゴミと空気ではゴミのほうが重い。そこで、空気と一緒に吸い込まれて回転させられたゴミは遠心力で空気より外側に押し出され、壁面にぶつかり、壁伝いに落ちていく。こうしてゴミが分離されるのだ。

このしくみからわかるように、サイクロン掃除機は高速の渦を作る必要がある。これが騒音を発生させる。サイクロン掃除機がフィルター式のものよりうるさいのはこのためである。

遠心力を利用したものは、身のまわりにたくさんある。例えば洗濯の際に利用する脱水機。濡れた洗濯物を高速回転させ、遠心力で水をはじき飛ばしているのである。

遠心力は自然の世界でも大切である。例えば「潮の干満」の説明に遠心力は不可欠である。これを理解するために、月を省き、地球が太陽を公転する単純なモデルを考えてみよう。

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地球が自転して東京が太陽に近い位置に来たとする。すると、東京湾の海水は太陽の引力に引かれて盛り上がり、満潮になる。面白いことに、このとき東京と地球の反対側でも満潮が起こっている。太陽から遠い位置にある海水はそのぶん強い遠心力を受け、太陽から遠ざかろうとして盛り上がるためだ。実際には月の引力などが加わり、潮の干満は非常に複雑になるが、遠心力の大切さは理解できるだろう。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

 
この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。

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