電気は私たちの生活に多大な利便性を提供している。その筆頭が「明かり」であろう。2011年3月に発生した東日本大震災で停電が起こり、暗闇の中で人はそのことを強く実感した。
その電気の「明かり」として長い間、白熱電球が使われてきた。そもそも、家庭用電気製品として最初に普及したのはエジソンが発明したこの白熱電球である。しかし、周知のように白熱電球はエネルギーの無駄が大きい。その代わりとして蛍光灯が普及したが、白熱電球ほどではないにしてもエネルギーの無駄が大きかった。
そこでホープとして登場したのがLED照明である。LED(発光ダイオード)を光源とした照明器具の総称である。消費電力は一般的な白熱電球の約1割、蛍光灯と比べても約3割だ。また、寿命は約4万時間と、白熱電球と比べて数十倍も長持ちする。
LEDは以前からさまざまな製品に組み込まれ、利用されてきた。CDやDVD、BDが製品化できたのもLEDのおかげだし、カーナビや液晶パネルなどのバックライトとしても活躍している。ここにきて照明としてのLEDが脚光を浴びたのは、技術革新のおかげ。その明るさが増し、十分な照度が得られるようになったからである。また、青色や白色のLEDが安価に供給されるようになり、自然な光が再現できるようになったのも寄与している。
今後はますます多くの「明かり」にLEDが利用されるだろう。実際、交差点の信号や自動車のヘッドライト、テールライトなどでも、LEDが主役になりつつある。
では、これから照明はLED一色かというと、そうではないようだ。有機EL照明という強力なライバルが現れている。これはホタルの発光の原理を電気的に実現したもの。LED照明は点光源の集合体のため明かりにムラができやすいが、有機EL照明は面が光るので優しい光になる。天井一面が光るといった、未来的な照明が可能になるのだ。
涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)
1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。
「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。