摩擦熱で無色になる! 「消せるボールペン」のからくり/すごい技術

pixta_37393228_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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●ボールペン

普段、当たり前のように利用しているボールペンだが、いろいろな種類の製品が出回っている。それらの工夫を見てみよう。

文具店の筆記コーナーに立ち寄ると、色の鮮やかさと形の豊富さから、ついつい買いたくなってしまうのがボールペンである。その豊富さは外見だけではない。内部のインクや構造もバラエティーに富んでいて面白い。

まずボールペンの基本構造を押さえておこう。ボールペンという名称が示すように、先端には金属ボールが埋められている。それが筆の役割になってインクを紙に運ぶのだ。安価なボールペンでも、先端にはミクロ単位の加工が施されている。一見頑丈(がんじょう)そうだがデリケートで、突いたり落としたりすると破損(はそん)するので注意しよう。

最初にも述べたように、ボールペンのインクや構造はバラエティーに富む。技術的には飽和(ほうわ)しているように見えるボールペンの世界だが、さまざまな工夫が新たに加えられている。

一例として加圧ボールペンを見てみよう。普通のボールペンは、芯を上に向けて書くとインクが出なくなってしまう。上に向けると自らの重みでインクが下がろうとし、筆記中に空気を巻き込んでしまうからだ。インクとボールとの間に空間ができると、字が書けなくなる。そこで、インクの芯の空気圧を高め、常にインクがボールに向かうようにしたのが加圧ボールペンである。これならば、上向き筆記をしても大丈夫である。

もう一つの例として消せるボールペンを見てみよう。その名の通り、消しゴムでこすると書いた文字が消せる不思議なペンである。その秘密は、消しゴムでこするときに発生する摩擦(まさつ)熱にある。インクとしてロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を一つのマイクロカプセルに入れた顔料を用いている。摩擦で温度が上がると、発色していた顕色剤とロイコ染料の結合が分離する。こうしてロイコ染料が本来の無色に戻り、インクの色が消えるのである。

このしくみは、小売店のポイントカードで利用されるリライトカードでも用いられている。また、ノーカーボン紙にも応用されている。

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。

 

涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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