電波時計は福島と九州から送られる標準時刻をキャッチしている/身のまわりのモノの技術(38)【連載】

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電波時計とは、標準電波送信所が送信する電波情報から自動的に時刻合わせをする時計である。2011年の東日本大震災で送信所の一つが破壊され、多くの機関で時計合わせに困ったという。電波時計はそれほど社会に浸透しているのだ。

電波時計は国内時計産業の救世主にもなっている。スイスの高級時計とアジアの格安時計に挟まれて国内時計業界は苦境に陥っていた。ところが、電波時計という付加価値をつけることで、国産時計は復活できたのである。

標準電波送信所は全国に2カ所ある。福島県の大鷹鳥谷山と福岡県の羽金山だ。東日本大震災では、福島県の送信所が壊れ、復旧までに数カ月を要した。

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二つの送信所から送られてくる電波の周波数は異なる。福島県からは40キロヘルツの、福岡県からは60キロヘルツの長波が利用されている。周波数が同じでは互いに干渉し合って誤動作を生じる恐れがあるためである。掛け時計の場合には、近い送信所の方角に文字盤を向けて設置すると感度がいい。

送られてくる電波には、日本の正確な標準時刻が記されているが、その正しい時刻は「セシウムビーム型原子周波数標準器」と呼ばれる時計によって刻まれている。セシウムは1秒間に91億9263万1770回正確に振動する電磁波を吸収するという性質があり、この性質と水晶発振とを組み合わせて、正確な時刻を刻むことができるのだ。誤差はおよそ10万年に1秒という高精度という。

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電波時計の中にはラジオのような受信機があり、一定の時間間隔で電波を受信する。受信された電波は組み込まれたICで解読され、クオーツ時計の誤差補正に利用される。

なお、国外でも時刻の標準電波を発信している国が多いが、国ごとに周波数が異なることに注意しよう。最近はすべての国の電波を受けられる腕時計も市販されているが、海外旅行で利用する際には、自分の時計がどの国に対応しているか確認する必要がある。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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