形態安定シャツは"濡れ干し"がオススメ/ 身のまわりのモノの技術(18)【連載】

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ワイシャツには綿がよく利用される。水分をよく吸収し、着心地がいいからだ。しかし、綿のシャツには、洗濯後にシワができやすいという欠点があった。忙しい現代、毎日アイロン掛けするのはたいへんである。

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そこで、現在、市販されている多くのワイシャツには形態安定という加工が施されている。形態安定とは「形状記憶」「ノーアイロン」などと呼ばれる繊維加工の総称である。この加工が施されていると、洗った後に干すだけでアイロンが不要になる。あわただしい現代人にはピッタリのシャツだ。

形態安定加工のしくみを見る前に、なぜシワができるのかを調べよう。綿繊維は天然のセルロース分子が緩やかに結びついてできているが、内部には大小さまざまな隙間がある。洗濯時には、この隙間に水がしみ込んで膨張・変形するのだ。そのまま乾燥すると、繊維が変形状態で固定されてしまう。これがシワの原因である。

シワを作らないためには、水による繊維の膨張を抑えればいい。その解決策として考え出されたのが架橋反応だ。繊維と繊維とがしっかり結びつくよう、分子同士に橋を架ける化学反応を利用するのだ。そうすれば、水がしみ込んでも繊維は膨張しなくなる。

架橋反応には最初にホルマリンが利用された。現在では肌や環境にやさしいさまざまな物質が考え出されている。

架橋反応を利用して繊維の変形を防ぐ技術は、何も綿だけに限ったことではない。ウールにも利用されている。「丸洗いできるスーツ」などがそれである。ウール繊維は表面がうろこ状になっていて、水を含むとささくれ立ち、隣の繊維ともつれ合う。これが、水洗いでウール製品が縮む原因だ。そこで、繊維を薄く樹脂で包んで架橋させる。すると、濡れても繊維はもつれ合うことがなく、乾燥すれば元の形に戻る。

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ちなみに、形態安定加工された衣服は「濡れ干し」が基本である。雫がたれるくらいが理想だ。水分の重みでシワが自然に伸びるからである。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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