私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!
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●フラッシュメモリー
小さくて高速、大容量と、三拍子そろった記憶素子。最近はハードディスクを代替するSSDとしても商品化されている。
パソコンで利用されるUSBメモリー、デジカメやビデオカメラの映像記録に利用されるSDカードやメモリースティックにはフラッシュメモリーが用いられている。小さくて軽く、高速大容量なのでたいへん便利だ。
フラッシュメモリーは半導体で作られている記憶装置である。ハードディスクが磁気で、CDが表面の凹凸(おうとつ)で情報を記録するのとは異なる。半導体でできているがゆえに、高速処理と微小化が可能になるのだ。
フラッシュメモリーの構造を調べてみよう。フラッシュメモリーの1ビットにはソース、ドレイン、ゲートという三つの電極を持つ一つのセルが対応する。このセル構造はCMOS型と呼ばれ、他の多くのLSIと共通する。フラッシュメモリーに特徴的なのは、そこに浮遊(ふゆう)ゲートと呼ばれる小部屋が組み込まれていることである。
フラッシュメモリーの読み書きの動作を調べてみよう。まずはデータの書き込み。ビット「1」は初期状態、すなわち浮遊ゲートに電子が存在しない状態を対応させる。ビット「0」の書き込みには、ソース・ドレインに電圧をかけ、さらにゲートに高電圧をかけて、大量の電子を流す。その電流の一部を浮遊ゲートに誘導して貯(た)めることで、「0」を表現する。逆電圧をかければ、再び「1」に戻る。
続いてデータの読み出しを調べてみよう。読み出しには、ゲートに低電圧をかけ、ソース・ドレイン間にも電圧をかける。浮遊ゲートに電子がなければ、通常のCMOSと同一なので、電子が流れる。浮遊ゲートに電子があれば、弱いゲート電圧は打ち消され、電子が流れない。こうして電流の有無で、データの「1」と「0」を読み取ることができるのである。このように、浮遊ゲートを巧(たく)みに利用することで、フラッシュメモリーはデータの読み出し・書き込みを実行するのである。
最後に、このメモリーの発明者は日本の舛岡(ますおか)富士雄氏であることを記しておこう。
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