家の外壁に取り付けられているアレ。電力量計の円板に隠された「有名物理現象」とは/すごい技術

pixta_25518421_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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●電力量計

使用した電力の量を測る電力量計。目に見えない電気の量を測れるのは、「アラゴの円板」という現象を利用しているからだ。

家庭で利用した電力は積算電力量計(略して電力量計)で測られる。家の外壁に取り付けられていて、円板がクルクル回るのが見える、あの計器である。しかし、そもそもどうやって使用電力を正確に測定しているのか。そして、あの円板は何の意味があるのか。その秘密を見てみよう。

電力量計は、物理学で有名なアラゴの円板と呼ばれる現象をたくみに利用している。アラゴの円板とは、糸で吊るされた何の変哲(へんてつ)もないアルミの円板の下で磁石を回転すると、円板がつられて回転し始める現象をいう。鉄の円板ならば当然だが、磁石とは縁がないアルミ板が磁石の影響を受けるのだ。電力量計でクルクル回っている金属板は、このアルミの板なのである。

gijutsu_p037.jpgアラゴの円板の現象は電磁誘導の法則で説明される。他項でもたびたび登場するこの法則は、「変化を減殺(げんさい)する方向に電気現象は起こる」ことを説く。この場合、磁石の進む先では円板上の磁力が増えるが、この法則のためにそれを減殺しようとする渦状の電流が円板の中に生まれる。この電流が作る電磁石が回転する磁石と作用し、円板を回すのである。

電力量計では、回転する磁石などない。その代わりに、相当する働きをするコイルをアルミ円板の上下に配置している。上と下でコイルに流す電流のタイミングをずらし、回転磁石に相当する磁力を電磁石で生んでいるのだ。しかも、このコイルは屋内配線に通じている。電気をたくさん使えば、それだけコイルを流れる電流が増え、強い電磁石を生み、円板が速く回転することになる。この回転数を計れば、使用電力が算出されるわけだ。

電力量計では、アラゴの円板の現象がもう一つ利用されている。中のアルミ円板は、先のコイルの電磁石とは別の制動磁石と呼ばれる永久磁石で挟まれているのだ。制動磁石は、円板が空回転しないようにブレーキの働きをする。この制動のしくみも、アラゴの円板と同じである。

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


 

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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です
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