私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!
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●消火器
家庭やオフィスで目にする消火器には、よく見ると「ABC」の文字が刻印されている。これは何を意味しているのだろう。
近年、民家にも火災警報装置の設置が義務付けられているが、痛ましい火災事故は後を絶たない。日頃の火の用心は大切だ。しかし、いくら注意しても災害は起こるもの。いざ火災が発生したときに強い味方になるのが、消火器である。では、なぜ消火器で火が消せるのだろうか。
モノが燃えるには可燃物、空気、高い温度、そして燃え続けるための化学反応の連鎖(れんさ)が必要である。消火するには、これらのいずれかを除去すればいい。家庭やオフィスでは、燃焼物体を冷やして消火する冷却法、空気の供給を遮断(しゃだん)して消火する窒息(ちっそく)法の二つが消火法として考えられている。
「冷却法」の代表は散水(さんすい)である。水をかけて、温度を低下させるのだ。「窒息法」は、家庭やオフィスでもっとも一般的に常備されているABC消火器に利用されている。消火剤とそれを押し出す二酸化炭素や窒素によって酸欠にさせるのである。
ところで、ABC消火器の「ABC」とは、いったい何を意味しているのだろうか。これは、火災時に燃焼する物質の分類で、Aは普通火災(木材、紙などの火災)、Bは油火災(石油や油脂類などの火災)、Cは電気火災(電気設備などの火災)のこと。火災の際には、原因がこれらのどの火災なのかを見極め、適切な薬剤の詰まった消火器を利用することが重要だ。しかし、一般家庭にその判断を求めるのは無理である。そこで、どの火災にも効果的な薬剤が詰まった消火器が求められる。それが「ABC消火器」なのだ。
家庭やオフィス用のABC消火器のほとんどは、消火剤の粉末が勢いよく飛び出す粉末消火器だが、どのように粉末を飛び出させているのだろうか。そのしくみには2通りある。
加圧式消火器は、レバーを握ると内部の加圧用ガス容器が壊れ、高圧ガス(二酸化炭素や窒素)が消火薬剤とともに吐出(としゅつ)する。一方、蓄圧式消火器は、消火薬剤と高圧ガス(二酸化炭素や窒素)が一緒に封入されているタイプだ。
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