相手との良好な関係維持には「苦労・努力・能力」に理解を示そう/発達障害の仕事術

pixta_33072985_S.jpg仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。

発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハックをご紹介。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!

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前の記事「言葉のボールを拾って「同意」するだけでコミュ力は格段にアップする/発達障害の仕事術(30)」はこちら。

 

世界は「奇妙な共感」で回っている

僕は「あなたの気持ちはわかります」と言うのがとても苦手でした。恋愛相談を受けても、「気持ちはわかるよ、辛いね」というようなことがどうしても言えず、友人を失ってきました。「みんな何を共感しているんだ?」と悩んだことは多かったです。

まるで、違う言語を話す人々の国に投げ込まれたような恐怖感にいつも襲われていました。僕だけが間違っている。僕だけが世界から孤立している。そんな気持ちがいつもありました。

しかし現実を言うと、人は長い時間の中で多くの経験と膨大な思考と判断を経て現在に至っています。その中で形成された個人のパーソナリティを「理解」するというのは、控えめに言って「とてつもなくコストのかかること」です。

僕は、ツイッター上で多くの人と対話してきました。それこそ、数百数千という人と言葉を交わしてきましたし、その中には集団で僕と敵対してくる人たちもいました。

あるとき、苛烈に僕を攻撃する人たちのグループを一人一人捕まえて、「なぜ僕を攻撃するのですか?」と個別に尋ねてみました。結果を言うと、息を合わせて僕を攻撃してきた人たちは、それぞれ全く違う攻撃動機を持っていましたし、あるいは攻撃動機の言語化すらできていませんでした。

これは、本当に興味深い現象だと僕は思います。皆さんも、あるとき突然集団の中で「悪」に、あるいは「敵」にされてしまったことはないでしょうか。僕は「学級会の魔女裁判」と呼んでこの現象を忌み嫌ってきました。発達障害者の実に多くがこの経験をしていると思います。

よく考えてみると、これはとても不思議なことです。根源的動機を共有しない人々が、「何となく」協調する。これは、その能力に乏しい僕にとって忌むべき現象ではあるけれど、その一方人間の非常に便利な能力だ、と考えるのが自然な気がします。

この「根源的動機や理解を共有しない人々が連帯する現象」を僕は「奇妙な共感」と名づけました。この「奇妙」という単語には大いに風刺的な意味を含ませています。世界はこの「奇妙な共感」で回っていると言っていいでしょう。あなたの職場にもサークルにも、きっとこれはあるのではないでしょうか。

 

「わかるよ」は適当でいい

世の中のほとんどの人にとって、「あなたの気持ちはわかる」という言葉は、実際とても軽いものなのです。本当に「わかる」必要などありません。他人の気持ちなんてそもそも誰にもわかりません。それでも「わかる」と言ってあげることで人間は喜ぶのです。

あなたは「気持ちはわかる」と言われたとき、「おまえは本当に俺の気持ちをわかっているか?」と相手を詰問したりしますか?

多分、しないと思います。しているならやめたほうがいいですね。「わかった」と言ってくれた、共感してくれた、その気持ちを少なくとも表面的には受け取ると思います。

「こんなことがあって、とても辛い」とある人が言ったとします。「こんなことがあって」の部分があなたには納得がいかなかった。「それはおまえが悪いだろ」が喉元までせりあがった。もちろん、それが大事な友人で「どうしてもそれを伝える必要を感じた」なら話は別ですが、そうでないなら「とても辛い」の部分だけに共感を返してやればいいのです。

「そうか、しんどいね」と返してあげる。これは、「雑談」と同じ単なるキャッチボールです。その「共感」は雑なものでかまいません。「よくわからないけど、とにかく辛いんだろうな」くらいでいいのです。悪く言えば、適当に玉を投げ返してやればいいのです。身勝手で適当なイメージを、投げ返してやればいいのです。

この話はとても「不誠実」なものに読めるかもしれません。僕もかつてはそう思っていました。しかし、その「誠実さ」は「誰も幸せにしない誠実さ」だと気づきました。

適当にやりましょう。これが「共感の極意」です。失敗したら「チッ、間違ったか、もうちょい観察だな」でいいんです。完璧にやるなんて、誰にも不可能なのですから。

 

「苦労」や「努力」を理解すると、人は喜ぶ

「共感」と対置される概念に「理解」があります。これは、とても重要な概念です。誰でも「理解できるもの」には「共感」しやすいでしょう。もっとも、「理解」した結果「共感できない」こともままあるでしょうが。しかし、「理解できない」と確定したほうが「共感したフリ」もやりやすいでしょう。

では、この「理解」をどういう風に行えばいいか。

あらゆる人間に「共感」を示すには、ほとんどの場合において「苦労」「努力」の2点を理解することに努めれば十分である。これは、僕の長年の経験からの結論です。2点に加えて、「能力」はオプションでやれそうならやりましょう。

人間は、「自分の苦労」を理解してくれる人間を「理解者」と認識します。人間は「理解者」を手放すことができません。誰であれ、そうだと思います。薄っぺらな共感ではなく「理解して共感してくれる人」には、本当に高い価値があるのです。

僕の現在の勤め先における上司は、大変有能かつ親切でやさしい人ですが、かなり強い癇癪持ちでもあります。僕も時々理不尽な癇癪の直撃に遭うこともありますが、全く腹が立たないんですね。起業家として失敗しているので、経営者であり上司であることの苦労は痛いほどわかりますし、癇癪のひとつくらい起こしても許される仕事をしているだろう、と思います。

そのような気持ちで接しているうちに、上司のほうから「すまない、私は癇癪持ちなんだ。勘弁してくれ」という言葉まで出てきました。入社以来、僕と上司は少なくとも僕から見てそれなりに良好な関係を維持できています。この「理解し、共感してくれる人」になれば、対人関係は驚くほどスマートに進みます。あなたもハッピーですし、相手もハッピーです。

 

【まとめ】
・相手の全てを理解するなんて絶対無理。共感は、雑で適当でいい
・相手の苦労、努力、能力。この3つに理解を示そう

 

次の記事「「くだらない・茶番だ」とナメてかかっても、得することは何一つない!/発達障害の仕事術」はこちら。

 

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<教えてくれた人>
借金玉(しゃっきんだま)

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

(借金玉/KADOKAWA)

社会生活がうまくいかず苦しむ「大人の発達障害者」が増えていると言われる現代日本。発達障害によって30歳を前に人生をほぼ破たんさせかけた著者が、試行錯誤で編み出した「発達障害者のため」の今日から使えるライフハックを多数紹介! 仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。

 

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この記事は書籍『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』からの抜粋です
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