身に付いているか?「恋愛という病」への免疫力/大人の男と女のつきあい方

身に付いているか?「恋愛という病」への免疫力/大人の男と女のつきあい方 pixta_31985279_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「恋愛という病」への免疫力を持っているか

新聞の人生相談に興味深い内容のものがあった。
投稿の主は66歳の男性。なんと63歳になる奥さんが同じ63歳の男性と浮気をしているのだという。最近の中高年層はとにかく元気だ。相手の男性は彼女の趣味だった登山グループで知り合った登山の指導者。

彼女は浮気相手とは別れたいのだが、当の相手が夢中になっているようでストーカーまがいの行為を繰り返し、警察の世話にもなったという。夫である男性にとっては、まさに寝耳に水の驚天動地。奥さんからの告白ではじめてその事実を知り、ショックのあまり血圧が急上昇。病院通いの身となって、そのために手に麻痺(まひ)さえ生じてしまうほどの症状だという。

40年も連れ添い、還暦も過ぎた奥さんの考えもしなかった行状に、悔しさと腹立たしさに耐えられず離婚を考えているというのだ。
この相談に対して、敬虔(けいけん)な仏教徒でもある著名な作家は、奥さんの浮気相手のストーカー行為に危機感を抱いていた。病気の身でもある相談者の夫に対して、奥さんの浮気相手からケガを負わされたり、殺されたりする可能性さえあると感じているようで、このままでは刃傷沙汰になりそうだからと離婚をすすめていた。

おそらく、相談者の手紙は新聞掲載に際して、かなりの部分を省略していると思われるので、詳細は一読者である私にはわからない。単純には判断できないが、浮気相手が異常な行動を続けるということを考えると、気の毒だが、奥さんに人を見る目がなかったとしかいいようがない。

私自身、正直なところ、結婚してから妻以外の女性と恋愛に陥ったことがあるかと問われれば「ノー」とはいえない身ではある。ただ、私は既婚者であることを隠して、女性とつきあったことは一度たりともない。妻以外の女性に恋したときでも、妻との離婚を考えたこともない。「婚外恋愛」であることを、相手にも納得してもらっての関係である。相手もまた結婚を迫るような女性ではなかったし、むしろ、そんな私のスタンスを歓迎する女性ばかりだったといっていい。

恋愛に関して、私はかなり精神的にも肉体的にも早熟なほうだった。高校時代からいくつもの恋愛経験を重ねてきた。格好よくいえば、すこぶるつきの情熱家であり、平たくいえば女性好きな人間だった。その相手のことが好きで好きで、眠れぬ夜を過ごしたこともあれば、その反対に、相手の女性がうっとうしくなって、どうすればうまく別れられるかに思いをめぐらし、妙案が見つからないまま朝を迎えたこともある。
その結果、自分にとって危機的な状況を招きそうな女性とは少しずつ距離を置くようにしていくことを学習したように思う。

男でも女でも恋をする心は素晴らしいし、その恋心が燃えている間は何ものにも代えられないほど、魂の高揚を感じる。だが、人間、恋だけでは生きていけない。仕事や家庭など、恋とは無縁のいくつものテーマととり組みながら生きていかなくてはならないのだ。

煎じ詰めて考えると、男は恋した女性に対して、はじめは恋人であっても、愛人としての恋人と、いずれ伴侶となりうる恋人を区別する目を持つべきなのだ。それは、女性の立場でも同じことがいえる。男女いずれの立場であっても、結婚を前提にしたつきあいがよくて、結婚をまったく視野に入れないつきあいが悪いともいえない。

私は過去の少なくはない女性とのつきあいのなかで、小さなトラプルを起こしたことはあるが、身の危険を感じるようなこじれた関係にもつれ込んだことはない。それは、恋愛経験のなかで、異常な執着心をあらわにするような女性が、何となくわかる感性を身につけたからだと思う。ある意味で「恋愛に対する免疫」がついたといえるかもしれない。

冒頭のケースでいえば、相談者の奥さんも、彼女に執着してストーカーまがいの行為をする浮気相手も、恋をしたときの自分や相手を俯廠(ふかん)するように見つめる視線が欠けていたのだろう。要は中高年でありながら、恋の初心者なのである。この先、この夫婦が回答者の言に従って離婚したのか、泥沼にはまったのか知る由もないが、平和な解決策を見つけてくれることを祈るばかりだ。

最近、中高年の恋愛沙汰でトラプルになるケースが多い。この年齢で男女を問わず離婚話が持ち出されるときは、必ずといっていいくらい原因がある。夫、あるいは妻の浮気、または夫のセックスなどである。

「恋ははしかのようなもので遅くかかると始末が悪い」という格言もある。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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