「男の理屈」と「女の感情」は決して交わることはない/大人の男と女のつきあい方

「男の理屈」と「女の感情」は決して交わることはない/大人の男と女のつきあい方 pixta_26648312_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「男の理屈」と「女の感情」は交わるのか?

人間は感情の動物である。論理で生きているわけではない。男と女、どちらが感情に左右されるかといえば、それは断然、女性だろう。怒りの感情に一度火がつけば、ノーベル賞学者クラスの論理性をもってしても、その怒りを抑えることはできない。
夫婦であれ、恋人同士であれ、どんなに愛し合っている男と女であっても、いさかいは必ず起こる。あとになって冷静に考えてみると、その原因のほとんどはとるに足らぬつまらないこと。味噌汁(みそしる)の味で離婚騒ぎになることもある。すべては感情のいたずらといっていい。

たとえば、ふだん憎からず思っている女性に対して、よかれと思っていったちょっとした注意、何げなくいったひと言が、二人の開戦のきっかけとなってしまうこともある。
そんなとき、男の立場でいえば、正面きって論争してはいけない。どう考えても自分に落ち度がないと、思っていてもである。ディベートなどはもってのほかで、火に油を注ぐ行為でしかない。
たとえ自分に非があるとわかってはいても、面と向かって指摘されると、絶対に認めないのが女性だと思っていたほうがいい。

「わかっているわよ。でもね......」
この「でも」が出てきてしまったら、このいさかい、男にとってはかなり厄介なものになる。男からたしなめられ、注意されたことが、図星であればあるほど反撃の感情が高じる。つまり、女性にとっては理不尽な難くせとしか思えないのである。すると、話の流れとはまるで関係のない話をむし返して、反撃に打って出る。

「そもそも、あなたって人は......」
こうなると、もうどうにもならない。一つ反論すればそれが10にも20にもなり、こうなると、双方難くせのぶつけ合いになる。場合によっては、それが深刻な別れを生むことにもなる。

「話せばわかるのではないか」
男なら誰でもそう考え、真意を伝えて和平に持ち込もうとする。だが、宜戦布告されたと判断した相手に、もはや理屈など通らない。要は「理解してもらおう」という考え方が、間違いなのである。

「理解は無理」
こんなとき、男女間の感情の違いに長けている男はこう考える。女性とのいさかいを何度も経験してきた男は、ムダな努力はしない。相手にわかってもらうことなど、すぐに放棄してしまうのだ。ひとたび、女性の表情に怒りの火種が見えたら、理屈での説得という戦術は封印する。

「ごめん」「オレが間違っていた」「言い方がよくなかったね」......などと率直に降参してしまう。無抵抗主義である。それで話は丸く収まるだろう。まかり間違っても、そのあとに「でもね」などという反論はしないこと。

女性は男の「でもね」を聞いたとたん、いっそうムキになり、いままでの労がすべてリセットされてしまう。一度は認めたにもかかわらず、再び自分に対する否定的な意見を聞かされるのだから、今度は「裏切られた」という感情が新たに生まれてしまうかもしれない。

こういう局面では、どちらかが100%の譲歩をしないかぎり、事態は収拾しない。となれば、損な役割を演じなければならないのは男と相場は決まっている。また、男はそうすべきなのだ。
イソップ寓話の『北風と太隔』ではないが、女性がきつく身にまとった「怒りのマント」を脱がすには、理屈という風は無力。「譲歩」という太陽がいちばん有効なのだ。

「私もいけなかったわ。ごめんなさい」
ひとたび風がやんでしまえば、大人の女なら怒りのマントを脱いでそういうはずだ。
ただし、この手法は恋愛における男と女の場合だけのこと。女性に理屈は通らないと早合点して、仕事のうえで、会社の同僚や部下の女性に対してこれをやっていてはバカにされる。仕事では、たとえ相手が女性でも是々非々でいくのが当然だろう。
無抵抗主義は、いわば「痴話喧嘩」限定の収拾策ともいえる。痴話とは「情人の間でたわむれてかわす話。転じて、男女の情事」(岩波国語辞典)。

できる外交官は敵対国の過失に対しては、屁理屈とも思えるほどの論理で対応するが、愛し合う男女のような友好国間のトラプルには、目くじら立てずに寛容に対処する。外交と男女関係はちょっと似ているかもしれない。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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