憎たらしいほど鮮やかに別れる。それが大人の男のきれいな別れ際/大人の男と女のつきあい方

憎たらしいほど鮮やかに別れる。それが大人の男のきれいな別れ際/大人の男と女のつきあい方 pixta_16750567_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「男の未練」とは何なのか?

女性が接客するクラプなどに行くと、いつまでもグズグズとしゃべっている長(なが)っ尻(ちり)の客がいる。そんな客は、「遊び下手」だからモテない。

モテる男はホステスと話が盛り上がっていても、切り上げるときはサッと席を立つ。「もう少しいたいな」と思うくらいが引き上げどきだ。そんなときは話し相手のホステスも、「もう少しおしゃべりしていたい」と思っているはず。

逆に会話が途切れているのに、まだねばっている客はホステスにも好かれない。それどころか、彼女に内心「店が混んできたのにまだいる。早く帰ってくれないかな」などと思われたら最低だ。それくらいなら、最初から居酒屋で飲んでいたほうがいい。

未練があっても、そんなそぶりは見せずにサッと切り上げる――それがモテる男の遊び方だ。
女と会って帰るときも同じだ。食事をしていてもホテルにいても、あるいは女の部屋にいても、帰るときは未練がましくせずにサッと切り上げる。たとえ本心は「まだ一緒にいたい」と未練があっても、そんなふりも見せずに帰る。

憎らしいほど、鮮やかに別れる。それが、大人の男のきれいな別れ際である。
下手に未練を残すと、女のほうも未練がましくなる。大人の女には、それがわかる。
いまの若い男のなかには、帰ったあともメールや電話で「無事着いた?いま何してるの?」などと、うっとうしい連絡をとるのがいる。それがうれしい女もいるが、そんな女は未熟なのだ。

これが大人の男と女の別れ―――まして男と女が年齢差のある不倫の仲だったら、なおさらだ。男のほうが既婚で、年も離れていれば負い目もある。いつも心のなかでは相手に「すまない」と思っている。だが、それは口に出していう言葉ではない。男の心の内の情念だ。

そんな不倫を続けている20代後半のグラフィックデザイナーの女性が、あるとき、こんな述懐をしていた。相手の男は30歳近く年上の雑誌の編集長。

「彼とは割り切ったつもりでいても、やっぱり、つらい。たとえば仲のいい同じ年くらいの友だち二人と、その彼たちと一緒に食事をしたときですが、そんなとき、私は彼に同席を頼めない。彼が来るはずないのもわかります。でも、二人の友だちは彼氏を連れてくるのに、私は一人。とても寂しい思いをしましたね。はじめから、そのつもりだったはずなのに、そんなとき、無性に会いたくなる」

やがて、そんな二人の関係も五年くらい続いて別れがきた。
「別れたあとは、彼から電話もメールもいっさいありませんでした。人によっては、冷たい男だとか単なる遊びだったと思うかもしれませんが、それは違います。彼と過ごした時間でわかるんです。すごく愉しかったし、いろいろなことを教わりました。正直なところ、彼にも未線はあったと思います。それは私の自負でもある。彼は決して未練がましい言葉は残さなかった。そのぶん私はみじめな思いもしなくてすんだ......憎たらしいけど、別れ方もカッコよかった。いい男でした。」

それが、彼の別れの作法だった。不倫といわれる関係であっても、男の思いがすべていい加減であるとはいえない。別れたあとでも、心のなかでは熱い思いにかられることもあるだろう。だが、別れのときがきたら、男はこのように潔く去るべきだ。

また、男たるもの、このことがわかる大人の女と恋ができれば幸せである。一方、そんな彼女は、これからもステキな恋をするに違いない。


『エレジー』という映画があった。2008年のベルリン映画祭に出品された作品だ。親子ほど年の差がある男と女の激しい恋愛物語だが、老教授役のベン・キングズレーが渋い演技を見せていた。相手役は私の好きなペネロペ・クルス。官能シーンもあって、二人の微妙な感情表現が見事だった。

その映画のなかで、若い男女が集まるパーティーに女が男を誘うシーンがある。だが、男は行かない。行けば愉しいだろうが、そんなところに年配の男が行けるはずがないのだ。怖くなった老教授は嘘をついてまでパーティーをキャンセルする。そして、「自分と彼女は不釣合いだ」と感じ、これからの未来に不安を覚え、別れを迎える――。

先の不倫相手もこの老教授も、女に対する気持ちは純粋だったろう。だからこそ、潔い引き際が大切なのだ。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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