「草食系」。それは男の欲望や思いを閉じ込めるごまかしの言葉/大人の男と女のつきあい方

「草食系」。それは男の欲望や思いを閉じ込めるごまかしの言葉/大人の男と女のつきあい方 pixta_35021272_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「草食系」という言い訳は捨てなさい

一時ほどではなくなったが、いまも「草食系男子」という言葉を耳にする。コラムニストの深澤真紀さんが最初に使ったと記憶している。

恋愛やセックスに縁がないわけではないのに、「肉欲」に対して積極的ではない男のことであると、彼女は定義している。使われはじめたのは2006年頃。いまでは完全に市民権を得た言葉だ。

「何をバカなことをいってるんだ」
野球にたとえると、現役バリバリのメジャーリーガーとまではいわないが、41歳で最年長記録となる2000本安打を達成した東京ヤクルトスワローズの宮本慎也選手(注:2013年に引退)や46歳でいまだに現役でがんばっている中日ドラゴンズの山本昌投手(注:2015年に引退)くらいはいける自信がある私にしてみると、草食系などという言葉は、単に男を舐(な)めたものとしか感じられない。ところが......。

なかには自ら好んで、この「草食系」という言葉を使っている男もいるのだという。奥手で内気、相手に嫌われることを恐れるあまり、つきあっている女性や女房に対し、自分の本音を出すことができない。そんな男がずいぶんと増えている。もちろん女性が強くなったのも事実だが、やはり男が弱くなったというのが正解だろう。
「ボク、草食系だから......」

彼らにとってはこのセリフ、すべてをうまく片づけてくれる呪文(じゅもん)のようなもの、つまりは免罪符なのである。この言葉を枕詞(まくらことば)に使うだけで、自分の消極性を棚に上げ、主体的には何もできないすべての言い訳としてしまう。聞こえはいいが、要は責任転嫁をしているだけだ。

「しょうがないわねえ」
女性も、妙にこの言葉を寛容に受け入れてくれる。
とはいえ、当事者である男性自身にとって、ごまかしでしかない「草食系」という言葉を多用するのは、かなり危険な行為ではないかと思うのだ。

何しろ、たったひと言で、自分の欲望、願い、思いをすべて封印し、内に閉じ込めてしまう。その場しのぎにはなっても、根本的には何も解決されていない。不満や鬱憤(うっぷん)は、ストレスとして体の奥底に、どんどんたまっていくことになる。人間の体は、放っておけば自然にストレスを解消してくれるようにはできていない。いずれは臨界点を突破するだろう。そのときがもっとも恐ろしいのである。矛先が外に向けば、衝動的な行動に出てしまう。家族や愛する女性を傷つけたり、さらには犯罪へとエスカレートすることもある。

逆に内へと向かえば、うつなどの症状も心配になる。そのときには、もう「草食系」などという言葉は何の役にも立たなくなっているだろう。

女性とうまくコミュニケーションできない、思ったことをうまく伝えられないのはしかたがない。
だが、自分を納得させるための手段としか思えないようなひと言に逃げるのは絶対にやってはいけないことだ。すべてはいずれ自分自身に跳ね返ってくる。不器用でも格好悪くてもいいから、自分の言葉で説明すること。言葉というのは言霊(ことだま)でもある。気持ちがこもった言葉ならば、相手も理解してくれるものだ。

いま、20代の若い女性は「草食系」が増加中の同世代より、40代の男たちを恋愛の対象としているケースも少なくない。『いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか(大屋洋子著 講談社刊)』という本もあるほどだ。いまのままでは、若い男性はどんどん同世代の恋愛から遠ざかっていく。

では、この「草食系」という言葉はどうしたものか。わざわざ女性たちがつくってくれた流行語だ。これは大いに活用するべきだろう。
好みのタイプの女性と酒席をともにする。あるいは何かのきっかけで、意中の相手と接する機会に恵まれたとき、意識的にこのセリフを使うのだ。
「オレ、草食系だから」
女性は安心するはずだ。何しろあなたは奥手で、体が目当てではない男性と見られるのだから、心を開いてくれるかもしれない。羽目を外しても安心だと思うようになるかもしれない。

だが、ここが勝負と見たら「草食系」男子ではいけない。あらゆるテクニックを駆使して、口説き落とすこと。
そのとき、あなたは「早食系」男子になっていなければいけない。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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