なんだかやる気が出ない...そんな日々を送っているのなら、「脳のどこかに未発達の脳番地があるかもしれない」と、脳内科医・加藤俊徳さんはいいます。「脳番地」とは、加藤医師が考案した脳の各部位を機能ごとに名付けたもの。今回は、著書『ぐうたらな自分を変える教科書 やる気が出る脳』(すばる舎)から、日常生活に関係する8つの脳番地を鍛えるコツを連載形式でお届けします。
記憶はポジティブに変換しておこう
やる気に乏しい人は、ものごとを自分にとって不利なほうへ考えがちです。
過去の出来事をいやなイメージで記憶していることが多いためです。
記憶はできる限りポジティブに変換したほうが、行動力アップにつながります。
私の場合も、これまでたくさん本を出版してきたなかで、売れた本もいまひとつの本もあります。
でも、売れなかったからと言って「あの編集者のせいで売れなかったんだ」などとは思いません(本当に!)。
「残念だけど仕方ない。また別のときに活かせるさ」と思っていたほうが、これからのことがうまくいきます。
「あの編集者のせいで......」と言っていると、ネガティブな記憶として脳に残るからです。
行動にブレーキをかける「負の脳回路」とは?
何かやろうとするときに、関連する記憶を呼び出すのは記憶系脳番地です。
このときにネガティブな記憶が呼び出されると、たちまち先入観にとらわれ不安になってしまいます。
「怖い思いをした」「損をした」「恥をかいた」といった記憶は、自分にとっては一大事ですから、大ブレーキになってしまうのです。
このとき脳のなかでは記憶系と思考系の2箇所を、信号が高速でくるくるくるくる行ったり来たりしているだけです。
自分としては「イヤなことばかり考えて何も手につかない」と思っていても、実際は何日も何年も、限局的な記憶を機械的に掘り返しているだけで、何かを考えているわけではありません。
このような人の脳をMRIで見て、脳相診断すると、むしろ、限定的な脳番地の働きによって、負の脳回路が強化されていることがわかります。
この負の脳回路にはまると、次のステップに進むことができなくなります。
「トラウマ」を掘り起こす思考回路がよくないのは、このシステムが脳の他の脳番地の働きを止めてしまうからです。
さっさと上書きして悩む時間を短くする
ネガティブな記憶がブレーキになるときは、新たな記憶で上書きすることです。
脳の仕組みとして一度記憶したことをなかったことにはできません。
でも上書きは可能なのです。
以前、不登校の高校生に本人の脳のMRIを見せながら「あなたが行きたくない、行きたくないって思っているとき、自分のこの狭くなった脳相でぐるぐるやっているんだよ」という話をしたことがあります。
そうしたら、次の日から学校に行くようになりました。
「学校には行きたくない」と思い込んでいたところに、自分が思考している脳相を確認して、記憶を上書きしたのです。
記憶系の中枢である「海馬」は新しい出来事を記憶することにも、古い出来事を思い出すことにも関わりが深いため、ダラダラと際限なく思い悩んでいると、新しいことにチャレンジする機能が低下していきます。
そうするとますます負の回路から抜けられなくなります。
悩みごとは前向きな気持ちを希薄にするので、要注意です。
【記憶系を鍛えるトレーニング】
1日の生活を30分前倒しにする
1日は24時間しかありません。
その時間をどのように使うかで、記憶する脳のシステムが変わってきます。
人は寝ている最中に日中の出来事を記憶として定着させていますが、睡眠時間が7時間を切ると記憶の容量に影響が出てきます。
また、朝の目覚めが悪ければ、午前中ぼーっとして出来事が脳に刻まれなくなります。
そこで、寝る時間を30分早めて、その分朝の開始時間を30分早めましょう。
これを1カ月継続してみると、これまでと違った記憶が脳に定着し始めます。
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みるみる気力がわいてくる日常生活のコツなど、脳とやる気の科学が全6章にわたって解説されています