なんだかやる気が出ない...そんな日々を送っているのなら、「脳のどこかに未発達の脳番地があるかもしれない」と、脳内科医・加藤俊徳さんはいいます。「脳番地」とは、加藤医師が考案した脳の各部位を機能ごとに名付けたもの。今回は、著書『ぐうたらな自分を変える教科書 やる気が出る脳』(すばる舎)から、日常生活に関係する8つの脳番地を鍛えるコツを連載形式でお届けします。
「先送り」は思考が弱い証拠
やる気が出ない人の大半は、ものごとを先送りしたがります。
やる気はなくても、「いつかやるかも」という将来の可能性は残しておきたいのです。
この「いつやるのか決めない」「やるのかやらないのかも決めない」という"決めたくない人"は、たいてい脳の思考系の経験値が低いです。
一方、ベンチャー企業の社長でどんどん業績を伸ばしているような「思いついたら即実行する」タイプは、必ずと言っていいほど思考系が発達しています。
自分の意思で行動できるためには、まず思考系を鍛える必要があるのです。
思考系の役割は、優劣を判断したり、何かを選択したり、「いつまでにこれをやるぞ」というプランを決定したりといった高度なものです。
思考系は、インプット担当の脳番地(視覚系、聴覚系、理解系、記憶系、感情系)に情報をとってくるように命令し、アウトプット担当の脳番地(伝達系、運動系、感情系)にはアクションを起こすように命令します。
「近場の温泉リストを持ってこい」→(検討)→「A温泉に行くぞ」というように、情報収集から実行まで取り仕切る「脳の司令塔」なのです。
「頭がいい」のと「実行できる」のは別
思考系脳番地は「思考」というくらいですから、考えるのが仕事です。
そうすると、「思考系脳番地が強い人=頭がいい人(テストの成績がよかったり、作業を効率よくこなせるような人)」と思うかもしれません。
しかし、このふたつは重なっている部分も多いですが、同じではありません。
一般的な頭がいい人は、思考に特化していることも多いからです。
思考に特化した人は、プロセスを考えたり推理したりするのが好きで、好きな話題なら議論をぐんぐんと掘り下げていく力もあります。
ただし、それがアクションに結びつくとは限りません。
何かを決めることは残りの可能性を捨てることです。
思考的には頑丈な脳みそを持っていても、そこで一歩踏み込んで自分に対して「今すぐやれ」と実行命令を出すためには、トレーニングが必要なのです。
「やる気だけはある」という人も要注意
なお、思考系脳番地は主に、右脳で「正解がない問題」を、左脳で「正解がある問題」を考えています。
右脳の思考系は考えようとするやる気をつくり出し、左脳の思考系は具体的な実行命令を出します。
右脳と左脳の思考系はそれぞれ連絡を取り合って、前向きなやる気のエネルギーを盛り上げていきます。
ですから、右脳の思考系だけが強すぎると(実際これで困っていることが多い)、やる気エネルギーだけがばんばん放出して、疲れる割に成果が上がらなかったり、指示がおおざっぱになって人に伝わりにくかったりします。
一方、左脳の思考系だけが強すぎると、論理的な思考や筋論だけが暴走してバランスの取れた判断ができなくなる傾向があります。
【思考系を鍛えるトレーニング】
2週間、いつも飲んでいるものを選択肢から外す
マンネリ化している思考から脱却するためには、いつもの自分を脱ぎ捨てることが必要です。
「えー、我慢できるかな」と不安に思うくらいの負荷を脳にかけていきましょう。
たとえば、毎日コーヒーを飲んでいる人なら、コーヒーを2週間続けて飲まないようにすれば、いつものコーヒーがなくても平気になっていきます。
さらに、紅茶や他の飲料に興味が出るようになります。
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みるみる気力がわいてくる日常生活のコツなど、脳とやる気の科学が全6章にわたって解説されています