誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
「ほんの一瞬の視線」に敏感な人は多い
気遣いは「相手が心地よいと感じるか」が大事。
一歩先を考えて、あえて「見ない」「言わない」「気づかない」のも気遣いのうちです。
人は、ふとした無意識の「視線」を敏感に感じ取ったりするものです。
ある男性は、初対面の女性がビジネスシーンにもかかわらず、結婚指輪があるかどうかを確認する視線に気づくと言っていました。
すぐさま確認されると、なんだか品定めされているようで居心地が悪いと話していました。
女性にとっては、さりげない視線のつもりかもしれませんが、意外と相手は気づいてしまうものです。
私も、顔に大きなおできができたとき、会話をしている相手の視線がとても気になったことがありました。
「私のおできをジーッと見ているな」と感じたときには、いたたまれない気持ちになり、結局会話に集中できなくなってしまいました(被害妄想かもしれませんが......)。
そんな私も、視線で恥ずかしい経験をしたことがあります。
友人とランチをしていたときのこと。
友人が頼んだメニューを見て「おいしそうだな〜」と心の中で思っていると、友人が「ちょっと食べてみる?」と私に言いました。
私は驚いて、「えっどうして?」と聞くと、「だって、食べたそうな熱い視線を感じたから」と一言。
「見透かされていた!」と、思わず赤面しました。
些細な目線で相手に気を遣わせてしまうこともある、ということを学んだ出来事でした。
相手に気を遣わせない「視線管理」に気をつけたいですね。
でも、どうしても気になるもの、違和感があるものは見たくなってしまうのが人間の性。
そういうときには、「私はつい見てしまう癖がある」ということをしっかりと認識し、会話の最中ではなく、何か動作をしたときなどにさっと視線を向けるようにしましょう。
どんなときでも「配慮」の気持ちを持とうとすることが大事です。
「○○にいましたよね」はNGワード
その場の状況を考慮して、余計なことを言わないのも一つの気遣いです。
学生時代、フレンチレストランでアルバイトをしていたとき、常連の男性がいつもとは違う女性の方をお連れになったときは、チーフに「余計なことは一切言わないように!」と口を酸っぱくして言われていました。
「いつものワインにしますか?」などうっかり口にしないよう、気を張っていたのを思い出します。
これは、仕事関係でも同じです。
「先日、○○にいましたよね」と言われて困った、という話をよく聞きます。
どういうことかというと、その日は同じ職場の仲間とのバーベキューパーティがあったそうなのですが、家族との約束があって断っていたようなのです。
ですから、みんなの前で、街で見かけたことを言われてちょっと気まずかったそうです。
特にビジネスにおいては、「○○にいましたよね」は気安く言わないほうが無難かもしれません。
プライベートの時間を大切にしている人が多いからこそ、注意したい一言です。
お伝えする場合には、一対一など限られた空間で言うのがベストでしょう。
状況によっては、「言わない」というのも一つの気遣いになるのです。
「気づかないふり」もときには大切
私が、まだCAになる前の話です。
北海道から上京するため飛行機に乗ったときのこと。
寂しさと不安で離陸した後、涙が止まらなくなったことがありました。
まわりの人にぐちゃぐちゃな泣き顔を見られるのが恥ずかしく、窓の外をずっと見ているふりをしていました。
すると、飲み物のサービスにきたCAの方は、その様子に気づいたのか、私には声をかけないでいてくれました。
その代わりに、「いつでもお飲み物をお持ちしますので、声をおかけくださいね」と書いたメモをテーブルにそっと置いてくれたのです。
私の状況を察して、声をかけないでいてくれた気遣いに、気持ちが温かくなったのを覚えています。
無意識に、また不用意に向けたちょっとした視線や言葉で、「気遣いがない人だ」と思われるのは残念なことです。
視線管理、言葉管理も思いやりということを忘れないようにしましょう。
【最初から読む】気遣いできないと評価がゼロも!?気遣いで変わる理由
元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します