誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
いつの間にか「気がきかない人」になっている
本当の気遣いは、相手の心に負担にならないものなので、相手に気づかれにくいものかもしれません。
しかし一方で、気遣いが「ない」と「この人は気遣いが足りない」と気づかれてしまうものです。
誰しも、相手を不快にさせたいとは思っていませんので、「わざと気を遣わない」というよりは、「ついウッカリできない」ことのほうが多いのでしょう。
やっかいなことに、「この人は気遣いが足りないな」と思われても、本人の耳に届くことはほとんどありません。
大人になると、「言わない」のが普通になってしまうからです。
そして、いつの間にか、自分の気づかないところで「あの人は気がきかない」というレッテルを貼られてしまうのです。
自分のことで手一杯のときほど要注意
私は以前、たまたま自分の気遣いのなさを知らせてもらい、大いに勉強になったことがありました。
今思うと、これは本当に幸運でした。
なぜなら、もしこの指摘がなければ、私はいまだに自分の気遣いのなさに気づけずにいたかもしれないのです。
それは、CA時代、新人の訓練指導をするインストラクターの仕事を任されたときのことです。
私自身、その期間はとても緊張していました。
無事、自分が担当している新人CAが課題をクリアし、訓練は終了。
晴れて所属の班に配属されることになりました。
しかし、ホッとしたのも束の間、同期がこんなことを教えてくれたのです。
「ナナエちゃんが担当していた新人さん、訓練終了後、Aさんの班に配属されること知ってたよね?Aさんが、そのことを事前に知らせてくれればいいのにって愚痴ってたよ。Aさんは新人さんの名前を入れた歓迎メッセージを用意しておきたかったみたい」
私は、「あ〜やっちゃった」とすぐに思いました。
Aさんは面倒見がよく、情の厚い人で有名ですから、先に伝えておけば、Aさんも新人の子も良いスタートを切れたはずです。
気がきくインストラクターは、配属先の班の上長にメモなどで先に知らせていたようです。
私は青くなって、すぐにAさんにお詫びをしました。
Aさんは、「まあ知らせなきゃいけない義務はないけどね......」と渋い表情でした。
「気がきく連絡」を心がけよう
連絡には「漏れてはいけない連絡」と、自分で相手や内容を考えて「伝えたほうがいい連絡」があります。
そして、この「伝えたほうがいい連絡」こそ、「気がきく連絡」であり「気遣い」なのです。
自分のことで頭がいっぱいになっているときは、ついまわりの状況を見落としがちです。
特に、忙しいとき、疲れているときほど、気にかけないと「ついウッカリ」忘れてしまうことが多くあります。
私は、このことをきっかけに、視野を広くして「連絡漏れはないか」「万が一を考え、伝えておいたほうがいいことはないか」と一呼吸おいて、考える癖をつけるようにしています。
ときに「いちいち連絡して、うるさいと思われないかな?」と迷うこともありますが、その際には「念のためお知らせしますね」という便利な一言を使えば、相手に伝えやすくなります。
人は、「知る」ことで安心感を得ることができます。
誰かに指示されなくても、自分の頭で誰に何を伝えたほうがいいのかを考え、「気がきく連絡」を心がける。
それが、相手が最終的に困らず安心してもらえる、気遣いの第一歩になるのです。
【最初から読む】気遣いできないと評価がゼロも!?気遣いで変わる理由
元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します