誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
「小さい声」は信頼性に欠ける
講師になって間もない頃の話です。
講演後、私の講義を後ろで見ていた先輩講師に、「ねえ三上さん、やる気あるの?」と言われたことがあります。
私は驚いて「えっ」と思わず声をあげてしまいました。
やる気がある私にとっては、突然水をかけられたような衝撃です。
私は「そう見えますか?どうしてですか?」と聞くと、先輩講師は「なんとなく」とだけ答えました。
私としては精一杯やっているつもりなのに、なぜそんな風に言われるのか、どうすればやる気が見えるようになるのか、全くわかりませんでした。
そこで私は、気の置けない友人に相談し、講義を見学してもらうことにしたのです。
講義を見た友人から一言。
「声が小さいから元気がなく見えるし、軽く話しているようにも聞こえる」
そう言われるまで、自分の声が小さいとは感じていなかったので、とても驚きました。
でも、緊張する場面ではよく聞き返されることがあったのを思い出したのです。
腹式呼吸で声が生まれ変わる!
声の大きさは「元気」だけでなく「自信」も表します。
なので、声が小さいというだけで、自信がないように見えたり、不安があるように感じたりするのです。
私は、友人のアドバイスを聞いた後すぐに、声のトレーニングをはじめました。
「声の大きさ」であれば今からでも改善できると思い、本などを買いあさり、発声方法を徹底的に学びました。
一番の基本は、腹式呼吸を身につけること。
胸から大きな声を出そうとすると無理している感じが伝わり、聞き手も苦しくなってしまうので、お腹から声を出すようにするのがいいのです。
これで、長い時間話をしていても、のどを痛めにくくなりました。
声の質さえも変わってきたように思います。
トレーニングをして3週間ほどで結果が実感できました。
「やる気あるの?」と言われた先輩講師にも再度チェックしてもらったところ、「だいぶ気合い入ってきたんじゃない」と言われたのです。
話している内容が同じでも、声の質が変わるだけで、全く違って聞こえるのです。
堂々とした声は「自信」に繋がっていく
「口先だけ」とか「腹の底から」などの言葉があるように、お腹から出す声は、相手に届く「響き」が全く違います。
声の振動が伝わると、相手の胸に話の内容が迫っていくようにも感じます。
逆に声の振動が届かないと、心からそう思っているようには聞こえず、信用性がなく見えるのです。
私も、それまでは話の内容ばかりを一所懸命に考えていましたが、どのように話すべきかをしっかり考えるようになりました。
たとえば、声の大きさを意識することで、聞いている相手を疲れさせないようにする。
声の高さを場面に合わせて変えることで、気持ちを伝える。
「声」には多くの可能性が詰まっているのです。
以前、ある金融機関の支店長さんが「電話の声が小さい人はトラブルを発生させる確率が非常に高い」ということをおっしゃっていました。
そもそも自信がないと、まわりに話の内容を聞かれたくないという思いから自然と声が小さくなります。
話の内容が聞こえないので、まわりもアドバイスができない。
気づいたときには、ドツボにはまっていることが多いそうです。
自信がないから声が小さくなるというのもありますが、声を変えることで自信がつく、という逆の連鎖もあると思います。
これは、「態度や振る舞いが心に影響を及ぼしている」という考え方です。
「行動感情理論」を提唱している、アメリカのウィリアム・ジェームズとデンマークのカール・ランゲという2人の心理学者いわく、人間は「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」そうです。
つまり、態度や振る舞いが、その人の心に作用するということなんですね。
まずは、「自分の声」を見直すことで、あなたの印象を変えてみませんか?
すると、自分に自信がつくだけでなく、あなたの思いや主張が断然伝わるようになりますよ。
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元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します