総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
法案を国会に提出できるのは内閣か国会議員だけ
「請願」は可能、「請求」は不可能
「間接民主制」が徹底されている日本では、国会に「法律案」を提出できるのは「内閣」か「国会議員」だけ、と決められています。
国会議員ではない私が、いくら「こんな法律があったらいいのになぁ」と思っても、直接国会に「こんな法律を作ってほしいので検討してください!」と求める(=請求する)ことはできません。
お願いする(=請願する)ことはできますが、国会の側にそれに対応する義務は発生しません。
法律を作って世の中を変えていきたい場合は、内閣か国会議員に影響を与えることができる人になるか、いっそのこと自分が選挙で立候補して国会議員になるしかない、ということになります。
ちなみに、都道府県や市町村といった地方の政治においては、住民が議会に、その地方のルールである条例の制定などを請求する制度が存在しています。
国会議員の1週間
国会議員は、通常国会や臨時国会などが開かれている会期中、「本会議」や「委員会」に出席する必要があります。
本会議は週3日、委員会は週2日開かれることが多いようです。
このほかにも、所属する政党の議員総会や部会、党派を超えて集まる政策勉強会などの会合に出席し、さらにその合間を縫って、議員会館を訪れる陳情者の話を聞いたり、様々な人と会食をしたりしています。
多くの議員たちは、金曜日の夜には地元に帰り、支援者たちとの会合や様々な行事に参加し、火曜日の朝までに東京に戻り、次の週を迎えます。
このような国会議員の週末の過ごし方を指す、「金帰火来」という言葉まで存在しています。
国会閉会中は、地元に戻ってイベントや会合に顔を出し、有権者たちの抱えている課題を聞き取りながら、次の選挙に向けて支持基盤を固める議員が多いようです。
国会議員が提出した法案の成立率はとても低い
「議員立法」は2割以下の成立
実際に成立する法案は内閣が提出したものであることが多く、国会議員が法案を提出すること、もしくは提出した法案を、あえて「議員立法」と呼ぶことがあります。
内閣が提出する法案の中身は、官僚と呼ばれる国家公務員たちが作っていることがほとんどです。
三権分立とはいえ、行政を担当する内閣が立法にも強く影響を及ぼしていると言われることもあります。
内閣が提出した法律案は、「ねじれ国会」でない限り、ほぼ国会で可決されます。
平成29年通常国会では、内閣提出法案66件のうち、63件が成立した一方で、議員立法136件のうち、成立したのは10件です。
法案を提出するだけでも賛同者が多数必要
そもそも、国会議員が法律案を国会に提出すること自体、簡単なことではありません。
国会議員が法案を国会に提出するには、衆議院では20名以上、参議院では10名以上の国会議員の賛成が必要です。
その法案が予算を必要とする場合は、衆議院では50名以上、参議院でも20名以上の賛成が必要となります。
さらに衆議院では、原則として所属する会派がOKを出している法案以外、受理されないというルールもあるようです。
こういった条件をゆるめると、自分の選挙区や支持団体のための法案を数多く提出する国会議員が出てくる可能性があります。
政党や内閣には、自分たちの思惑とは異なる法案が出されることを避けたい、という思いもあります。
結果として、国会議員が自分の想いを実現させるために議員立法に取り組む場合、かなり高いハードルを越える必要が生じています。
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています