自粛生活で「多くの気付き」が...。医師・鎌田實さんが考える、アフターコロナの「価値観の大転換」

雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「アフターコロナの価値観の大転換を楽しもう」です。

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時間の質が重視される

新型コロナ感染症が長期化するなかで、この危機を経験して、何が変わっていくのかを考えました。

ぼくはこれまで、毎週のように全国各地へ講演に行き、"旅暮らし"をしてきました。

しかし、3月からほぼ毎日、家で過ごすようになり、「時間の感覚」が変わりました。

時間に追われるのではなく、自分が主体的に時間を使っているという感覚です。

ぼくたちは、ミヒャエル・エンデの『モモ』のなかに出てくる時間泥棒に時間をすい取られるような生き方をしてきました。

でも、コロナによる自粛生活で、「慌てない生活」を経験したことで、時間の質というものを意識するようになったと思います。

早朝の澄んだ空気のなかで、テレビを消して、音のない世界を楽しむ。

夕方の空を眺めながら、家族と食事をする。

あるいは、社会貢献や趣味にもっと没頭したいと思う人もいるでしょう。

そんな時間の豊かさの価値が、今まで以上に上がっていくのではないでしょうか。

モノ離れが加速する

もうずいぶん前から、あふれるモノを断捨離して、すっきりと暮らそうという人が増えてきました。

今回のコロナ自粛で、それが加速したように思います。

たとえば、洋服。

おしゃれをして外食する機会が少なくなり、洋服もさほど必要ではないことに気が付きました。

着心地のいい普段着と、たくさんは要らなくなった代わりに、質のいいものが少しあればいいと考えます。

身の回りのモノも、どんどん買って、どんどん消費するのではなく、いいものを手入れしながら、長く使っていくようになるでしょう。

サスティナブルという価値

地球環境や資源のことを考えたサスティナブル(※1)なものの価値が高くなっていくと思います。

『もったいないキッチン』というドキュメンタリー映画を見ました。

賞味期限切れの材料で作った、とてもおいしそうな料理が登場します。

日本は、食品ロス大国です。

飢餓に苦しむ国がある一方で、賞味期限を迎えた食品が大量に処分されていく矛盾をそのままにしておくことはできません。

水資源という問題もあります。

ペットボトルの水は手軽に買えますが、水源は大量にくみ上げればやがて枯渇し、その周辺の環境に影響を与えます。

また、石油製品のペットボトルは、マイクロプラスチック(※2)という新たな問題も生み出しています。

ぼくは、最近、ペットボトルの水を飲まなくなりました。

住んでいる茅野(ちの)市の水はおいしく、わざわざペットボトルを買う必要がないのです。

世界中を飛び回ってきましたが、安心して水道の水が飲めるところはとても少ないです。

せっかくの日本のよいところを、ぼくたちは忘れていたように思います。

おいしい水を生み出してくれる自然、そうした環境を含めて、自分の住む町の水がおいしいということを誇らしく思っています。

※1 持続可能な取り組みのこと。
※2 微小なプラスチック粒子のこと。特に海の環境に悪影響を与える。

都会から地方へ

人口密度が高いことは、感染症の一つのリスクです。

都会から地方へと移住を考える人も増えていると聞きます。

時間の感覚だけでなく、空間にも意識が向いてきたということです。

仕事によっては、オンラインでつなげれば、地方でも生活ができます。

都会と比べて、土地や住宅も安いので、広々とした空間でむしろ快適に暮らせます。

贅沢をいわなければ、庭つきの一戸建てだって借りることができるでしょう。

地方では、農業の担い手や地域コミュニティの担い手が不足しています。

若い世代がそうした担い手になってくれるなら、地方は大歓迎だと思います。

自己決定する生き方

死に対する考え方も、コロナを経験しながら変わっていくのではないかと予想しています。

日本人の多くは、死について考えることが苦手で、終末期医療をどこまで受けたいか、明確に自己決定しないまま、子どもに任せたり、医師に任せてきました。

その結果、望んでもいない人工呼吸器につながれて、 最後のお別れの言葉も言えずに亡くなっていくことも少なくありません。

だれもが、いつ新型コロナに感染するかわかりません。

重症化したとき、人工呼吸器や人工心肺装置(エクモ)の治療を希望するかどうか、よく考えておくことが大切です。

そして、どんな死に方をするのか、どこで死ぬのか、葬式はどうするのか、どれか一つでいいから、自分で決めておきましょう。

一つでも自分で考え、自己決定できると、より真剣に生きることと向き合うことができます。

死ぬまで自分らしく生きるには、今、どうしたらいいかも見えてくるでしょう。

コロナを超えて、新しい生き方を

新型コロナウイルスは、まだまだ未知な部分がたくさん残されています。

イタリアの論文では、完治した人の3割に、味覚障害や呼吸困難などの症状が残るといいます。

肺線維症になると、中高年になってから在宅酸素療法が必要になる人が出てくるかもしれません。

サイトカインストーム(※3)で血管炎が起こると、10年後に脳梗塞や脳出血を起こす可能性があります。

精巣に障害を起こし、男性の不妊の原因になるという報告もあります。

しかし、ウイルスは必ず弱毒化していきます。

その日が来ることを信じて、コロナ後に起こる価値観の大きな転換を読み取りながら、自分はどう生きていくのか、新しい生き方を探していきたいものです。

※3 免疫が暴走して 、全身の臓器や血管に炎症が起こること。

【カマタのこのごろ】

さだまさしさんと一緒に活動している「風に立つライオン基金」では、豪雨災害で大きな被害があった熊本の避難所などにガウンやサージカルマスク、アルコール消毒液、がれき運搬用の軽トラ3台を送りました。

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2010_P143_03.jpg「風に立つライオン基金」は、熊本県人吉市へ支援物資と軽トラを送った。軽トラはがれきの運搬で役立っている。

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また、ぼくが代表をしているJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)とJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)は、クラウドファンディングで集めた約240万円で、難民キャンプや小児がんセンターにマスクや手袋を送りました(写真)。

【まとめ読み】気づき満載! 鎌田實さんの記事リスト

 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

■鎌田實先生の新しい本が出ました!

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「コロナ時代を生きる ヒント」

(鎌田 實/潮出版社)

豊かな「死」を取り戻すために奮闘する人々との対話を通じて、鎌田實先生がたどり着いた「死」の実像とは――? “カマタ流”の温かくて柔らかい「人生の終(しま)い方」に触れられる、鎌田先生の新刊です。

■「認知症予防」をもっと詳しく知りたい人は!

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「図解 鎌田實医師が実践している 認知症にならない29の習慣(朝日出版社)

今回、鎌田先生が紹介してくださった「認知症予防」が詳しく解説されている最新刊! 医学的に正しい認知症予防の方法が、豊富なビジュアルとともに紹介されています。
「速遅(はやおそ)歩き」「青魚、えごま油、高野豆腐を食べる」「新聞から4つの単語を選ぶ」など、無理なく日常生活で実践できる習慣がわかりやすく解説されています

■鎌田實先生の特集が一冊の電子書籍に!

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「鎌田實式 若返り健康法」(『毎日が発見』健康ブック Kindle版)

定期誌『毎日が発見』の大人気特集が電子ブックになって登場!! 
「ぼくは67歳で筋トレを始めてから、人生が変わった!」と話し、ご自身を「スクワット伝道師」という鎌田實先生(71歳)の健康法を大公開。「スクワット」や「かかと落とし」など無理なくできる「筋トレ」の方法をはじめ、ゆで卵やジュースなどの「若返りごはん」レシピ、「心の若返り方」や、若々しい先生の「着こなしの極意」まで、盛りだくさん。保存版の一冊です!!

この記事は『毎日が発見』2020年10月号に掲載の情報です。

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