「パワハラ防止法」ってどんな法律?すべての働く人が知るべき「第三十条の三」

2020年6月1日から改正労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」が施行されました。経営者はもちろん、従業員もパワハラ防止対策に取り組まなければならないという法律ですが、一体何に気を付ければよいのでしょうか。そこで、パワハラ防止法のすべてがわかる『最新パワハラ対策完全ガイド』(和田隆/方丈社)から、そもそも「パワハラ」とは何か、そして最新の対策や対処法などをご紹介します。

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パワハラ防止はすべての人の責務である

2020年6月に改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」が施行されました。

この法律の「第三十条の三」に、国、事業主、労働者の責務が明記されています。

つまり、国や企業はもちろん、経営トップから従業員まで、パワハラ防止のために、組織を構成する全員が対策に取り組むことを求めているのです。

大事なところですので、条文を引用しながら確認しておきましょう。

一項は、国の責務についてです。

国は、労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「優越的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。

冒頭の「労働者の就業環境を害する前条第一項に規定する言動」というのが、パワハラ行為に当たります。

パワハラ防止のための旗振り役を国が果たしていくということです。

厚生労働省では、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、パワハラ・セクハラ・マタハラをなくすためのキャッチフレーズを募集するなど、ハラスメントを一掃する気運を高めています。

国はこれからも、パワハラ防止のために積極的に情報を発信し、社会全体に浸透を図っていくはずです。

つまり、パワハラに対する国民の理解と関心が、今後さらに深まっていくと考えられます。

二項は、事業主の責務です。

事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。

ここでは、パワハラ防止のために具体的な取り組みをすることを事業主に求めています。

もし研修などを実施していなければ、仮にパワハラ問題が起こってそれが不当な行為であることが明らかになったとき、事業主はパワハラ防止に対する努力を怠ったとみなされることになるでしょう。

場合によっては行政指導が入る可能性もあります。

パワハラを放置することは許されません。

事業主はパワハラ問題と向き合い、今後はこの法律を踏まえたパワハラ防止対策を講じていくことが必要になります。

三項も事業主に向けての条文です。

事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。》

経営者自身がパワハラについてしっかり学び、職務としてこれを防止するための行動をとらなければならないと定めています。

私は今、多くの企業でパワハラのセミナーや講演を行っています。

その開催にあたり、冒頭で経営トップの方があいさつをされることも少なくありません。

これは大変いいことです。

パワハラ防止の取り組みは、組織を挙げて行うべきものです。

トップ自らがその意思を示し、従業員の皆さんにメッセージを発することはとても重要です。

ただ、残念なことに、冒頭のあいさつが終わると、あとの話は聞かずにそのまま退席されることがほとんどです。

このことを、私は残念に思います。

パワハラに関して中途半端な理解や自分流の解釈をしているだけでは、対応を誤る可能性があります。

経営者こそ、従業員の先頭に立ってパワハラに関する正しい知識を身につけ、防止に向けた取り組みを率先する姿勢を示していただきたいものです。

四項は、労働者の責務です。

労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。》

労働者も決して傍観者であってはいけないことを、この条文は示しています。

パワハラは、パワハラをする人・される人だけの問題ではありません。

職場全体の問題、その職場が抱える潜在的な課題の象徴として、パワハラが表面化していると、私は考えています。

経営者、管理職はもちろん、一般従業員も、パワハラ問題に無関係な人はいません。

それぞれが、それぞれの立場で、それぞれのタスクを果たしていくことで、パワハラのない明るい職場を築いていけるのです。

【続きを読む】権限、経験、専門性を持っていれば、あなたも・・・!?ハラスメント専門家が教える「パワハラの定義」

【まとめ読み】『最新パワハラ対策完全ガイド』記事リスト

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これからの時代、「働く人の常識」になるパワハラ対策を全7章で解説。厚生労働省のガイドライン全文も付録されています

 

和田隆(わだ・たかし)
メンタルプラス株式会社代表取締役。ウェルリンク株式会社シニアコンサルタント。ハラスメントなどをテーマに、民間企業や官公庁等で講演・指導を行う。ハラスメント防止コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー。著書に『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(方丈社)がある。

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『最新パワハラ対策完全ガイド』

(和田隆/方丈社)

ついに施行された「パワハラ防止法」。2020年6月からは大企業で、2022年6月からは中小企業でも適用されますが、そもそも、どういった指導がパワハラになるのでしょうか。「パワハラ」とは何かから、起きてしまったときの相談窓口、逆パワハラを防ぐ方法まで、具体的ですぐに使える「パワハラ対策」が網羅された一冊です。

※この記事は『最新パワハラ対策完全ガイド』(和田隆/方丈社)からの抜粋です。
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