身近な社会問題として注目を集める、パワハラ=パワーハラスメント。今や労使紛争のトップになったパワハラは、どうすればなくせるのでしょうか。カギとなるのは「命令する上司」から「動機付ける上司」への転換。10万人以上に講演・指導を行ってきた和田隆さんの『パワハラをなくす教科書』(方丈社)から、これだけは知っておきたい「パワハラをなくす方法」について、連載形式でお届けします。
パワハラの4タイプ
パワハラにも、タイプがあります。その人が感情型なのか思考型なのか。そして、主張型なのか非主張型なのか。この2つの軸で大きく4つのタイプに分類できます。
「感情型+主張型」人は、恫喝型のパワハラをします。相手に対し怒りの感情をぶつけるタイプで、一般的なパワハラのイメージがこれに該当します。現場のリーダーで恫喝型のパワハラをする人は減っていますが、政治家や経営者、スポーツ団体のトップなど、組織のトップに立ち、強大な権限を持つ人の中にはまだまだいるようです。
「思考型+主張型」の人は、理詰めで相手を追いこみます。とにかく正しさが第一で、ないのですが、論理的に矛盾がある部下に対しては徹底的に突き詰め、心理的に追いこみます。
非主張型にも、感情型と思考型があります。「感情型+非主張型」は、静かなパワハラを行います。感情的に許せないけれど言葉が出ない人は、無視をしたり、相手にまったく反応しないといった態度をとりがちです。現場で支援をしていての印象ですが、このケースに陥るのは女性同士が多いように思います。決めつけはできませんが、女性は感情のやり取りを大事にする人が多いからこそ、うまく理解し合えなかったとき、切り捨てて終わりにしてしまうのではないでしょうか。
「あの部下は、何を言ってもわからないから黙っているんですよ」という、自分なりの理由があったりして、その行為は目立たず、顕在化しにくいのも特徴です。無視は証拠が残りにくく、事実認定もしにくい。
そして、「思考型+非主張型」は、相手を否定する方法でハラスメントを行います。否定的な部分が人格に向けられたとき、パワハラとなります。
恫喝型はターゲットとなった部下だけでなく、周囲も被害者となります。「次は自分が狙われるのでは」と怯え、職場関係も悪化させます。しかし一方で、派手で目立つぶん、周囲が味方になってくれたり、一緒になって対策を講じたり、被害者同士の連携プレーができたりする。また、恫喝型のパワハラをする人には、意外と感情に訴えたり、うまくのせると関係性を築きやすいこともあります。
一方、理詰め型は理路整然と正しさで追いこむので、本人は反論も否定もできませんし、周りも何も言えなくなってしまう。被害者が孤立しやすく、この理屈型に責められた部下はメンタル不調になりやすいように思います。
恫喝型・理詰め型もつらいものですが、精神的にいちばんつらく感じるのは、無視ではないでしょうか。まだ、否定型のほうが救われます。相手に関心があるからこそ否定をするわけで、無視というのは、その存在を認めないということですから心理的負荷は大きくなります。
また、無視は顕在化しにくく、証拠も残りにくい。恫喝型はいざというときは録音でき、告発する状況にもっていきやすく、守りやすい。今の時代、目立つパワハラは怖くありません。その意味でも、無視という静かなパワハラが怖いのです。
恫喝、理詰め、無視、否定。この4つのパワハラのタイプは、変わっていくことがあります。主張型は目立ちますので、「パワハラをしないようにしよう」と気をつけると、恫喝型は無視をするようになり、理詰め型は否定型へと移っていきます。しかし、パワハラのタイプが変わっただけで、なんら問題の解決にはならないのです。
誰もがパワハラの被害者にも行為者にもなる可能性があります。高いストレス状態になり、自分が追いこまれたとき、どんな態度をとってしまうのかがわかると、備えることができます。パワハラリスク度チェック同様、「自分を知る」という意味で考えてみてください。
パワハラがなぜ生まれるのか。その理由を企業の体質や構造から解明し、改善方法が解説されています。管理職となったあなたが抱えている問題を解決するヒントがまとめられています