その後、結婚を男女に限定して考えていた自分に気づいた寅子は、再び山田轟法律事務所を訪ね、轟に詫びる。すると轟は「人間なんてそんなもんだ」と言い、自分が子どもの頃から「男らしさ」にこだわり、男という型にハマっている実感をいつも欲していたこと、花岡(岩田剛典)への思いに気づいたのは花岡の死をきっかけに自分を振り返ったから、そして、よねが「私の前では強がらなくていい」と言ってくれたからだと話す。しかし、自分の気持ちを知った後も「どうせ世の中にはわかってもらえまい」と諦めていたとき、遠藤と出会い、後に互いに同じ思いを抱いていると知った。
「でも......この先の人生、お互いを支え合える保障が法的にない。俺らが死ねば、俺らの関係は世の中からはなかったことになる」
壁に書かれた憲法十四条は、寅子の背景にあり、轟はその埒外に座っているというニクイ演出だ。
轟に感謝し、裁判官としても人としても、自分に見えていない世の中のことを知りたいと言う寅子に、よねは「別にワガママじゃないだろ」と呟き、こう言う。
「結婚しても名字を変えたくないと思うこと。当然の権利だろ。誰の顔色気にして弱気になってるんだ」
悩む寅子を心配した優未は航一に相談、航一は自分が佐田姓になると言い出すが、百合(余貴美子)は反対。寅子もそれを望んではいないが、航一は結婚したい理由を改めて伝える。
「寅子さんの夫と名乗りたい。僕の妻ですと紹介したいんです。夫が妻だと名乗り紹介することは、世界中の人に『あなたを愛している』と伝え続けることと同じだと、そう思うんです」
こう聞くと、なんだか「結婚」というものがどうでもいいもののような気がしてくるが、寅子は賛同。
そこから、寅子は自分の実績を終わらせないため、仕事上では「佐田寅子」を名乗らせて欲しいと桂場(松山ケンイチ)に打診。しかし、桂場は反対。その理由は「裁判官だから」。「関わる事件の判決、令状、全ての文書に記名するときに戸籍上の名前と違うとなると、そこでケチがつき、信ぴょう性が失われるから」と説明する。裁判官の旧姓使用が認められるのは、実に平成29年になってからのこと。まだまだ遠い未来だ。
顛末を轟に話すと、轟は航一と優未を連れて事務所に来るように言う。事務所に集まっていたのは、ゲイカップルや性転換手術を受けた人など......。遠藤は言う。
「自分が曲げたいものを折るって、自分も折らせた相手も傷つけることなんです」
彼らの話を聞いたことにより、航一は結婚を辞めようと寅子に言う。現在の婚姻制度が自分たちの幸せにそぐわないならやめようと言い、婚姻届けの代わりに遺言書をかわそう、お互いの名字を名乗った上で「夫のようなもの」「夫婦のようなもの」になりたいと伝える。寅子も同意。