【虎に翼】「詰め込み過ぎ」批判も覚悟の上か...現代社会で山積みの問題を朝ドラで描く脚本家・制作陣の思いを痛感

そして、直明の結婚式が無事に行われた後、直明は寅子のためにお返しをサプライズで企画。直明が涼子(桜井ユキ)に手紙を出したのをきっかけに、女子部の仲間たちが連絡を取り合い、玉(羽瀬川なぎ)を含む全員が判決文を読み上げる形で、寅子と航一の「結婚式のようなもの」が行われる。そして、寅子と優未は星家に引越し。新生活が始まるが......。

重要な問題がたくさん描かれていることで、「詰め込み過ぎ」と感じる視聴者は正直少なくなかった。また、同性愛者たちの中に女性の同性愛者がいなかったこと(脚本では描かれていたが、尺の都合でカットされたため、「透明化」されがちな存在をここでも透明化してしまったという声も)をはじめ、それぞれにもっと丁寧に繊細に描いて欲しい、深掘りして欲しいという声も噴出していた。

それにより、傷ついた人もいるかもしれない。その一方で、朝ドラという多くの人が観る枠で描かれたことに救われたと感じる人もいる。

そもそも本作は、第1話冒頭で読み上げられた憲法14条を軸に、全ての人の平等を考える物語になっている。この作品を「雨だれの1滴」とするわけにはいかないが、今の社会で山積している問題を、十分ではなくとも俎上に載せよう、まず声をあげよう、一歩踏み出そうという脚本家・制作陣の思いはしっかり受け止め、共に学びたい。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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