強盗殺人事件にまで発展した「特殊詐欺」被害を防ぐにはどのようにすればいいのでしょう? 「認知件数」や「被害額」、「年代別の意識」など、特殊詐欺の推移や最新の状況について、警視庁犯罪抑止対策本部の山上嘉人警視にお聞きしました。
命まで奪われかねないアポ電の怖さ
2019年1~2月に、あらかじめ家に現金があるかどうかを電話で確かめた上で強盗に押し入る事件が、東京都内で3件続けて発生しました。そのうちの1件は、被害者が亡くなり強盗殺人事件にまで発展しています。警視庁は強盗殺人などの疑いで3人の男を逮捕しましたが、まだほかに犯人グループがいるかもしれません。怖いですね。
このような犯人たちが犯行前にかけてくる電話はアポイントメント電話、あるいは犯行予兆電話と呼ばれていて、アポ電という通称で知られています。ニュースで一度は耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか?
このアポ電は、元々は振り込め詐欺などをはじめとする「特殊詐欺」で被害者をだますために用いられていた手口で、今回発生したアポ電強盗は、その手口から派生した犯行の一つ
です。
特殊詐欺の被害が注目され始めたのは2000年代の前半でした。警察と金融機関などの連携も進み、09年ごろには認知件数は一度落ち着いたのですが、その後は犯人たちも新たな手口を考え出してはお金をだまし取り、警察はその対策を取る、といったイタチごっこが続き、依然、被害は続いています。
特殊詐欺の認知件数と被害額
警視庁WEBサイトより作成
※ 認知件数とは、警察が「犯罪が起きたこと」を確認できた件数です。未然に防がれ、通報されなかったものなどは含まれません
このような状況の中で、お金をだまし取るのではなく、直接奪った方が早いと考えるようになった一部の犯人グループがアポ電強盗を起こしたのではないか、と見られています。
最近では、特殊詐欺の被害は東京や神奈川、埼玉などの首都圏や大阪といった人口の多い地域に集中している傾向があり、特にそういった地域に住む人にとっては、いまもなお安心できる状況ではありません。
お金をだまし取られかねない、また場合によっては命まで奪われてしまうアポ電の魔の手から、私たちが身を守るためにはどのようなことができるのでしょうか。山上警視は、「まずは、自分はだまされないという思い込みを捨てることが大切です」と訴えています。
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取材・文/仁井慎治