8割が「自分は大丈夫」と油断!? 特殊詐欺「アポ電」対応策

強盗殺人事件にまで発展した「特殊詐欺」被害を防ぐにはどのようにすればいいのでしょう? 「認知件数」や「被害額」、「年代別の意識」など、特殊詐欺の推移や最新の状況について、警視庁犯罪抑止対策本部の山上嘉人警視にお聞きしました。

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8割以上の人が「自分は大丈夫」と思っている!?

以下の、17年に内閣府が発表した「特殊詐欺に関する世論調査」の結果を見てください。


特殊詐欺に対する年代別意識
8割が「自分は大丈夫」と油断!? 特殊詐欺「アポ電」対応策 1906_p097_01.jpg

内閣府が2017 年3 月に発表した「特殊詐欺に関する世論調査」より作成
(18 歳以上の国民3,000 人を対象に調査し、1,878 人から有効回答)

 

全体ではなんと8割以上の人が、「自分は被害に遭わないと思う」「どちらかといえば遭わないと思う」と回答しています。年代別に見ましても、その割合は8割前後で推移していて、18~49歳でも50歳以上でも、大きな違いはありません。

これは、非常に危うい兆候です。

年代を問わず、「自分はだまされない」という思い込みを捨てられていない人が多いというのです。「相手は詐欺のプロです。電話で話してしまうと、必ずだまされてしまうと認識することが必要です」と、山上警視。

それでも「私は大丈夫」と思う人は、警視庁や東京都、経済団体、労働団体、防犯団体などが運用する『特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京』のウェブサイトなどで公開している、実際にかかってきたアポ電の音声を聞いてみるといいかもしれません。犯人たちは実に丁寧かつ柔らかな口調で銀行員や市役所職員などを装っていて、ついだまされてしまいそうになる手口の巧妙さ、複雑さがうかがえます。

 
犯行から身を守るために留守番電話機能を活用

このような犯人たちにだまされないために最も有効なのは、犯人からの電話に出ない、ということに尽きます。そのためには留守番電話機能を利用するのがよいでしょう。

アポ電は、平日の昼間に家庭の固定電話にかかってくることがほとんど。最近は携帯電話でかけてくることは少なく、番号非通知や知らない固定電話の番号からかかってくることが多いそう。

山上警視は「一度留守電に用件を吹き込んでもらい、相手が分かった上で、必要な場合はかけ直す、というようにしましょう」と呼びかけています。

犯人たちのペースに巻き込まれず、一度落ち着いて考える時間を持つことが、だまされないための秘訣です。かかってきた電話番号が分かるナンバーディスプレーも有効な対策の一つですが、各家庭に普及しているとはいえず、有料だったり利用できないタイプの電話回線もあったりしますので、あくまで留守番電話機能を主に使用し、それと併用するのがより安全だと言えます。

ほかにも、「通話内容を録音します」というメッセージとともに自動で通話を録音してくれる自動通話録音機や、非通知の着信などを拒否する迷惑防止機能付電話もあるので、活用すればより安心ですね。これらの機器は自治体によっては無料貸し出しも行っているので、

「留守番電話だけでは少し不安」という人は、居住地の自治体、あるいは最寄りの警察署に一度相談してみるのがよいでしょう。

ただ前述の通り、相手は詐欺のプロ。つい電話に出てしまい、うっかりお金について犯人に話してしまう場合も。そういうときは最寄りの警察署へ通報しましょう。緊急の場合は110番へ。犯人は待ってはくれませんので、ためらわないことが大切ですよ!

 

取材・文/仁井慎治

 

 

<教えてくれた人>

山上嘉人(やまがみ・よしと)警視

警視庁犯罪抑止対策本部 企画・統計担当管理官。警視庁が進める「特殊詐欺対策プロジェクト」に関わる。このプロジェクトに関係する、詐欺事件の捜査を行う刑事部や暴力団事件を扱う組織犯罪対策部など複数の部署間の調整、企画を担当している。

この記事は『毎日が発見』2019年6月号に掲載の情報です。

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