ひどい痛みで指が曲がらない、関節が太くなった、指の形がおかしい...。それらの症状、もしかしたら「へバーデン結節」かもしれません。患者数350万人以上とも言われる「へバーデン結節」ですが、原因自体はまだ解明されておらず、手指の痛みをそのままにしてしまっている人も少なくないそう。そこで今回は、麻酔科医・富永喜代先生による著書『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』を紹介。具体的な症状や対処方法、自分でできる痛みをやわらげる治療メソッドなど解説していきます。
※本記事は富永喜代著の書籍『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』から一部抜粋・編集しました。
手指に関するおもな病気とその症状について
富永先生、手指や手首の病気について教えてください
調理師として働いている50代の女性、山本さん。
ひどい手指の痛みに耐えかねて、富永先生のクリニックに診察を受けに来ました。
山本さん「実は整形外科を受診したところ、手指の使い過ぎと言われまして。でも仕事は休めないですし、我慢しながらやっているのですが......」
富永先生「どんなときに痛みを感じますか?」
山本さん「仕込みでプチトマトのヘタをつまんで取るなど、細かい作業をするとき、とにかく痛くて。大量の野菜を水洗いするときも痛いです」
富永先生「指に見た目の変化はありますか?」
山本さん「第一関節のあたりに水ぶくれのようなものができていて、指が少し曲がってきているようにも感じます」
富永先生「それはへバーデン結節の疑いがありますね。単なる手指の使い過ぎによる痛みではなく、れっきとした手指の病気です」
山本さん「へバーデン結節......。それってどんな病気なんですか?」
富永先生「手指に関する病気にもいろいろあるんですよ。どこが痛むかによって、どんな病気なのかある程度推察することができます。おもに指の第一関節に痛みや変形が見られるのがへバーデン結節。もし第二関節に痛みや変形がある場合はブシャール結節という病気が疑われます。どちらも進行性で、厄介なことに放っておくとどんどん変形が進んでしまうので注意が必要です」
山本さん「そうなんですか! やっぱり手指の使い過ぎが原因なのでしょうか?」
富永先生「実はへバーデン結節というのは、確かな原因がわかっていない病気なんです。山本さんのように細かい作業で手指をよく使うことも、この病気の要因のひとつと考えられます。何か持病はお持ちですか?」
山本さん「はい。喘息持ちで、吸入治療をしています。症状がひどいときはステロイドを服用することもあります」
富永先生「それもへバーデン結節悪化の要因と考えられますね。ステロイドの服用は骨を弱くするので、骨粗鬆症になりやすく、指も変形しやすくなってしまうのです」
山本さん「そうなんですか......」
富永先生「へバーデン結節にはほかにも、片頭痛や首、肩の不具合が要因になることもあります。遺伝というケースもありますね」
へバーデン結節の患者は全国で350万人以上。その9割が女性
山本さん「へバーデン結節って、あまり耳馴染みのない病名です。もしかしてとても患者の少ない難病だったりとか......?」
富永先生「へバーデン結節の患者さんは全国で350万人以上いると言われているんですよ。でも病気の原因がよくわかっていないので、治療方法も確立していないのです。ですから病名を告げられず、山本さんのように『指の使い過ぎ』などと突き放されてしまうケースが非常に多いんです」
山本さん「使い過ぎって言われても、仕事はやめられないし、家事もあるし、手指を使わないわけにはいきません」
富永先生「そうですよね。女性は家事など、日常で手指を使って細かい作業をすることが非常に多いものです。そういうこともあってか、へバーデン結節は女性に多い病気で、患者さんの約9割が女性なんです」
山本さん「え! そんなに?」
富永先生「女性は男性に比べて骨の作りが小さくて弱いので変形しやすいというのも、女性の患者さんが多い理由です。さらに、特に閉経後の50~60代や、出産後に発症する人が多いことから、女性ホルモンの変化もこの病気の要因に挙げることができます」