ICTエバンジェリスト(伝道者)で「世界最高齢プログラマー」と称される若宮正子さん。
88歳の今もなお、毎月の半分以上は全国へ講演会に出かけ、そのスケジュール管理から切符の手配までワンオペでこなしています。世界中の人とインターネットを通じて意見交換しながら好奇心旺盛に日々を過ごす若宮さん初めての人生読本『昨日までと違う自分になる』(KADOKAWA)より、一部抜粋してご紹介します。
【前回】88歳でICTエバンジェリストで活躍中!若宮正子さん「一人行動に躊躇はないの」
下手でも伝わればOK!のマーチャンズイングリッシュ
私の英会話もインターネットがきっかけです。
1990年代に入り、インターネットの登場で、それまで国内の人とのやりとりが中心だったパソコン通信から、簡単に外国の方とも繫げられるようになりました。
私は海外旅行が大好きなので、もっと外国のことを知りたい、直接お話しできるようになりたいと思うようになりました。もっともその前から月1回の英語教室のお世話になっていましたが、いよいよ本格的に英語を習い始めたんですよ。
月に1回の英会話教室で、私は一生懸命勉強しているつもりだったんですけどクラスの誰よりも間違いが多く、先生からは落第点ばかりもらってました。
テクノロジーやエンターテインメント、デザインなどの分野で活躍する世界の人たちが集結する国際会議「TEDx Tokyo」での講演の一部や、国連本部の基調講演を英語で行なったことから、私が英語ペラペラだと思っている人もたくさんおられると思います。
実は全然得意じゃないし、日常会話すらだいぶ怪しい。私の英語を聴いたらびっくりしちゃうんじゃないかしら。
そんな私が、英検準1級の試験を受けたところ、なんと合格。勉強としての英語は結構いい線なんです(笑)。
受かりましたと伝えたら、英会話の先生がショックを受けられたようです。
「若宮さんがなぜ英検準1級をとれたのかさっぱりわかりません。おそらく試験官が、下手な英語でも臆することなく堂々としている若宮さんの姿に驚いて、採点するのを忘れてしまったんでしょう」なんて言われましたよ(笑)。
ある年の英会話教室のクリスマスパーティで、先生から〝ベストスチューデント〞としてごほうびをいただきました。なんでかなと思ったら「あなたほどたくさん間違った人はいません。堂々と間違える。周りの誰が見ても間違いだとわかる。それくらい間違いの見本です。教師としても、こうやって教えたらこう間違うということがわかりました。若宮さんのおかげで周りのクラスメイトも成長したし、みんながハッピー。だからあなたがベストスチューデントです」って。
褒められてるのか、そうじゃないのか、よくわからないですが、素晴らしい先生でした。
やっぱり、失敗とか、恥をかくことを恐れていては駄目ですよ。下手くそだっていいんです。日本に来られた外国人が、つたなくても頑張って日本語で喋ってくださればこちらも嬉しいじゃないですか。
間違えたって怒られるわけじゃないし、ましてや88歳のおばあさんが英語をつっかえたって、もう歳なんだから当然だ、と思っていただけます。
それよりも堂々と、伝えたいことを伝えるほうが大事。それこそがマーチャンズイングリッシュなんです。