87歳で活躍中の若宮正子さんが語る「『健康にいい食事』より『体の声に従う食事』を!」

定年後に母の介護をしながらパソコンを始め、2016年からはアプリの開発を開始。17年に米国アップルによる世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待され、現在、岸田首相主催のデジタル田園都市国家構想実現会議構成員としても活躍中の若宮正子さんに「健康にいい食事」について伺いました。

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健康にいい食事をしなくちゃいけないの?

「腹が減っては戦はできぬ」という諺(ことわざ)がありますが、いまが人生で一番忙しいかもしれないと思う日々の中で、食事の大切さを痛感しています。

私は58歳のときにパソコンに出合い、インターネットを通して世界がグーンと広がりました。

さらに81歳で「hinadan」というゲームアプリを発表したところ、アメリカの報道機関「CNN」で取り上げられて、人生がガラッと一変。

まさか80代で人生の転機を迎えるとはゆめゆめ思っていませんでしたが、何が起こるか分からないのが人生。

自分の未来に蓋をしてはいけないなとつくづく思います。

こうした私の話を聞きたいと言ってくださる方が現れて、全国津々浦々へ出かけて講演活動をしたり、岸田文雄首相主催の「デジタル田園都市国家構想実現会議」に参加することに。

その他にも雑誌の対談に招かれたり、本を執筆したり......。

誰かに必要とされているなんて幸せだと思えば、疲れなんか吹っ飛んでしまうと言いたいところですが、肉体的には疲れたなぁと感じることもあります。

でも、食べれば元気になるのです。

行く先々で「一体、どんな食生活を送っているのですか?」と聞かれるのですが、基本的には質素です。

たとえば昨晩は、切り干し大根と油揚げの煮付け、紫つるなの胡麻和え、玉ねぎとワカメのサラダを作りました。

残った切り干し大根は、今日のお昼に卵焼きに入れて食べました。

スタミナ料理にこだわらないのは、戦後の飢餓状態を体験しているから。

9歳で学童疎開をしたとき、最初は「大根ご飯」でした。

それが「大根の葉っぱご飯」になり、やがてお米が浮いているだけの薄いおかゆになって......。

成長期を「離れて暮らす親よりおにぎりの方が恋しい」というほどの飢餓状態で過ごし、それでも87歳まで元気に生きてきたのだから大丈夫だと考えているのです。

といって肉も魚も食べられるし、揚げ物も好き。

スーパーのお惣菜やコンビニのお弁当などカロリーの高いものや、ソーセージなどの加工食品も気にしません。

体に悪影響を及ぼすといわれるものでも、それを食べて即死したという話は聞いたことがないので、たまに食べる程度なら問題はないと楽観的にとらえています。

一日に三食と決めていないし、栄養のバランスを考えてご飯を食べることもありません。

私がしているのは、体の声に従うことだけ。

それだけで自然と自分にとって最適な食生活を送ることができるというのが持論です。

世の中には「体に良い食事」に関する情報が溢れているけれど、何が自分の体質と合うのか、三日坊主に終わらず続けることができるのかは、自分の心が一番分かっています。

正直な気持ちこそが、最適な食生活を見つけることにつながるのではないでしょうか。

食べたいものを我慢するより、「おいしい!」「楽しい!」という至福感を得る方が健康的です。

親しい人たちとテーブルを囲めば、それだけで免疫力が上がる気がします。

私の場合、日頃は家で一人ご飯ですが、それはそれで楽しい。

お料理上手なわけではないけれど、冷蔵庫にあるもので創作料理を作るのが好きなのです。

そういえば、60代のとき、NHKのお料理コンテストに「かぼちゃとドライフルーツの茶巾絞り」を応募して入賞したこともありました。

一人ぼっちの食事時間もワクワク感を見つければ、幸せな時間に早変わりします。

いずれにしても気分優先。

体の声にダメ出しをせず、食べたいときに食べたいものを食べたいだけ食べるのが若宮流。

とびきりワガママな食生活を送ることが私の健康法なのです。

イラスト/樋口たつ乃

 

<教えてくれた人>

若宮正子(わかみや・まさこ)さん

1935年東京生まれ。東京教育大学附属高等学校を卒業後に、銀行へ勤務。定年後に母の介護をしながらパソコンを始める。2016年にアプリの開発を始め、17年に米国アップルによる世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待される。現在、岸田首相主催のデジタル田園都市国家構想実現会議構成員としても活躍中。

この記事は『毎日が発見』2023年2月号に掲載の情報です。

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