友人や家族と遊んでいても、仕事が気になって楽しめない...休日に、心と体をちゃんと回復できていますか?そんな「毎日忙しい!」と感じるあなたに、精神科医・西多昌規さんの著書『休む技術』(大和書房)から、日常のパフォーマンスが上がる「上手に休むコツ」を連載形式でお届け。きちんと休めば、仕事もプライベートもさらに楽しめるようになります!
疲れて効率が落ちるより、ちゃんとサボるほうがいい
「昔は3人でやっていた仕事を、今は2人でやらされる」こんなグチを、診察室でもしばしば聞く機会があります。リストラなど人員削減の影響だけでなく、心身の病気で休んでしまった同僚のぶんの仕事もカバーしているというケースもあります。
「戦力の大きさは数の2乗に比例する」というランチェスターの法則をそのまま当てはめるわけにはいかないでしょうが、1人人員が減ると、組織の戦力は1人分以上減るという感覚は共通していると思います。
過積載のトラックは事故を起こしやすいのと同じで、仕事、ストレスの過積載は心身の病気の元です。優先順位の低いものを省き、最重要な仕事、あるいは自分および家族の健康といった重要度の高い案件に力点を置くこと、いわゆる「上手に手抜きする」「サボる」作法は、厳しい今後の日本社会を生きていくうえでは欠かせないスキルです。
「サボる」と聞いて、悪印象をもつひとも少なくないでしょうが、ここでは、もっと自他ともにプラスになる前向きな「サボり」について考えてみましょう。
1時間でも30分でも、まとまった時間を自分のためにキープすることも、広義の「サボり」に入る思います。キープした時間をボーッとする、、週末や長期期休暇の予定を考える、または、長期的な仕事や家族の計画を考えてみるのに当てるのも悪くないでしょう。
忙しいときは、慣れや惰性でむしろ非効率で生産性の低い努力をしてしまっている場合が少なくないものです。こうした場面で、会社や組織に対して自分を良く見せようとする八方美人的な人ほど、「サボる」ことが苦手で、四方八方から押し寄せる業務に押しつぶされてしまうのかもしれません。
前もって、半休申請してしまうのが効果的
「同僚に迷惑をかける」「サボったぶんだけ仕事が溜まる」という、「サボり恐怖症」のひともいます。ほかのひとの手前、申し訳ないと、サボることを大罪のように考えてしまうひともいるでしょう。
実際、休みを取るひとに対して「あいつはヒマそうだな」と敵意にも似た不満を抱くひともいます。「年休を取ると嫌な顔をする上司」にも、こういった考えの持ち主が多いのではないでしょうか。
『幸福論』を著した哲学者のバートランド・ラッセル卿も、怠惰や退屈についての論考の中で、働いているひとにとっては、怠惰は罪悪感を伴いながらも、一種の憧れをもって見られると考えていました。「サボる」という行為は、罪悪感、ねたみ、憧れなど、人間の複雑な思考や感情に関連しています。
実践的に言えば、「サボる」方法とは、スケジュールの時間管理に尽きています。仕事をしている平日はもちろん、家族サービスに追われる休日にも、「サボる」ための時間を読み込んで、あけておきましょう。できれば、スケジュール帳にまとまった空白地帯を「書き込む」ことです。
この半日はリフレッシュに当てよう、と決めたなら、勤め先には、前もって半休の申請を出しておきましょう。ほかの予定が入らないよう、時間泥棒から「サボり」用の時間を防衛しなければなりません。
「サボる」という概念からはほど遠い経営学者ピーター・F・ドラッカーは、「成果を上げる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」という言葉を残しています。時間配分、時間管理を優先して考えようというこの言葉を拡大解釈すれば、「サボる」時間確保から始めなさい、と読み取ることもできるのではないでしょうか。
科学的根拠と臨床経験を基に、過ごし方や取り方など「休み」について、5章にわたって徹底解説