人と一緒にいるのが疲れる、人付き合いが苦手など対人関係に悩みを抱えていませんか。自身も極度の人見知りという午堂登紀雄さんは「外交的な付き合い方が苦手でも生きていける」といいます。そんな午堂さんの著書『「人見知り」として生きていくとと決めたら読む本』(すばる舎)から、口下手や人見知りでも無理せずコミュニケーションができ、孤独すらも楽しむコツを連載形式でお届けします。
「逃走スイッチ」が入ったときの対処法を持とう
私は若い頃、人前で話すことが大の苦手でした。
人前に出るとドキドキ緊張して赤面し、手が震えたり、大量の汗をかき、突然頭が真っ白になって自分が何をしゃべっているかわからなくなってしまうのです。
大勢の視線が集まると、交感神経が活発になり心拍数が上がります。
大昔、祖先が捕食獣に襲われたときの恐怖感がよみがえり、「逃走か闘争か」という本能が目覚め、行動スイッチが入るからなのでしょう。
これは野生動物に限らず、私たち人間の誰にでも少なからず起こることです。
誰かと目が合って緊張を感じると、普通の人は「目をそらす」逃走を選びますが、なかには「なにガンつけてんだよ!」と闘争を選ぶ人もいます。
内気でシャイな傾向が強い人は「逃走スイッチ」が過剰に入ってしまうので、できるだけスピーチやプレゼンといった、人前で話す機会はなるべく避けたいものです。
しかし、実際にはそうも言っていられないことのほうが多いと思います。
そこで、私は次の点を意識して臨んでいます。
乗り切り方:「伝わるか」にフォーカスする
プレゼンやスピーチをするときは、「うまく話せるか」「良い評価を得られるか」「失敗しないか」ではなく、「伝えたいことがきちんと伝わるか」にフォーカスします。
上手にしゃべらないといけない、かっこいいことを言わないといけない、失敗してはいけないという気持ちが強いと、どうしても緊張しやすくなります。
その結果、本当に失敗してしまいます。
テレビのリポーターのプレゼンや、サスペンス映画で弁護士役の俳優が法廷で主張するようなスピーチは別ものです。
かっこよく目立つ必要も、上手に話す必要もありません。
「大事なことをしっかり伝えよう」という気持ちで臨むと内容に集中できます。
乗り切り方:自意識過剰に気づく
人前に出て「恥ずかしい」という感情は、自分の中の思い込みや妄想によって自分勝手に発動させている場合がほとんどです。
あなたも仮に、他人が何か失敗をやらかしたとしても、すぐに忘れているのではないでしょうか?
ということは、周囲もその程度にしか思わないということです。
自分がした発言を恥ずかしいと思っているのは自分だけで、他人もそう思うとは限らない。
ちょっとぐらい失敗したからといって「恥ずかしい」と感じるのは、大いなる自意識過剰、あるいはカン違い野郎ではないか、くらいに割り切ることです。
乗り切り方:書いて読み上げる
次に重要なのは、「準備」と「練習」と「慣れ」です。
私自身、何もなくてもしゃべれるようになったのはここ数年のことで、起業して講演の仕事が増えてきたときも、話すことをすべてパワーポイントに箇条書きにして、それを見ながら講演するスタイルを取ってきました。
「伝えるべきことは全部書いてしまえばいい」という発想で、プレゼンでは箇条書きの中の要点部分を掘り下げて説明し、講演では箇条書きをフックにして関連した内容を話すようにしています。
会議で発言するときも、発言しようと思う内容を書き留めながら人の話を聞けば、「君の意見は?」と突然聞かれても、オドオドせずに対応できます。
上司への業務報告も同様で、内容を書いて読み上げればよいので、緊張は和らぐはずです。
結婚式のあいさつといったプライベートな場では、手紙を書いて読み上げることで失敗を回避できます。
そのときも、気の利いたことや感動的なことを言おうとする必要はなく、無難にやり過ごせればよいと割り切ることです。
どんなに感動的で素晴らしいスピーチをしても、著名人でもない限り、数年後には忘れ去られるのですから。
そういえば私も自分の結婚式のとき、最後の「新郎からの挨拶」は、何日もかけて文章を推敲し、何度も読んで丸暗記しました。
おかげで「いい挨拶だった」と言われましたが、「新婦からの両親への手紙」のほうが強力で、披露宴での感動は、結局新婦にすべて持っていかれる運命にあるんですよね。
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