【ちむどんどん】予告の「人生最大のピンチ」が安心感に? メイン舞台が銀座と鶴見に移り料理人の入口へ

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「人生最大のピンチ」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】【ちむどんどん】3作連続!? 仕事も家も決まらず故郷を出て...その裏で「本土復帰後の沖縄」どう描く?

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本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第6週。

沖縄本土復帰の日に、仕事も住む場所も決まらないまま、シェフになる夢を叶えるため上京した暢子(黒島結菜)。

先週ラストには次週予告で「人生最大のピンチ」と言われていたが......。


暢子が賢秀(竜星涼)のいるボクシングジムを訪ねたところ、賢秀はすでにジムから逃げていて、KOデビューの賞金として送ってきた大金はジムの会長などからの借金だったことがわかる。

上京初日に兄は行方知れずで、友達の電話もつながらず、賢秀を探すべく、横浜の鶴見に向かうと、酔っぱらいのおじさんたちにご機嫌に絡まれるのは、確かに怖いし、心細い。

しかし、これが「人生最大のピンチ」だとしたら、コロナ禍で疲弊した視聴者たちに「あまり悪いことは起こらないドラマ」として安心感を事前に与える予告だろう。


実際、暢子は鶴見の沖縄人会の会長・平良三郎(片岡鶴太郎)に救われ、紹介を受けて、大城房子(原田美枝子)がオーナーを務める銀座のレストラン「アッラ・フォンターナ」に行き、就職試験を受けることになる。

いったん落ちるが、シェフ・二ツ橋(高嶋政伸)の口添えで試験に再トライし、得意の沖縄そばをそこにあった食材・パンチェッタを利用して作り、見事合格。

暢子の就職先が決まる一方、良子(川口春奈)は石川(山田裕貴)に思いを寄せているが、良子に熱烈なアプローチを繰り返してきた製糖工場の御曹司・金吾(渡辺大知)から求婚され、比嘉家の困窮ぶりを考えた「打算」と恋の間で心揺れる。

不思議なのは、ちょっと前まで花束を持って学校をフラフラ訪れてはニヤニヤ&「ピース」と言うばかりの金吾をうっとうしく感じていたのに、今となってはむしろ煮え切らず、他者の人生に責任を負うことができない石川と比べて明るくまっすぐな好青年なのではないかと思い始めた視聴者が多いこと。


返すアテもなく借金を重ねる比嘉家に対して、最初は冷たい印象があった大叔父(石丸謙二郎)が、暢子への「女のくせに」、賢秀への「頭のないやつ」呼ばわりが飛び出すまでは至極真っ当に見えたのと同じ現象が起こっている。

比嘉家の人々との心の距離が遠い人のほうが常識的に見え、と同時に、逆に好意的な人――暢子に味方してくれる二ツ橋が怪しく映るという不思議。


そして、賢秀が暢子のお金を持ち逃げした展開で、第6週は終了した。

父・賢三(大森南朋)が生きていたら、比嘉家の運命は違っていただろうか。
豚のアババをラフテーにする前に、可愛がって世話していた賢秀にちゃんとことわりを入れていたら、賢秀はもう少し真っ当な大人になったろうか。


「消費者金融でちょっとずつ生活費をつまむ(借りる)のを繰り返していくうち、消費者金融のATMがいつの間にか自分の財布みたいに思えてくるんですよ」
以前、週刊誌の「借金」特集で取材した男性がそう語ったときの笑顔と、借金を重ねて逃げ回る賢秀、そして比嘉家の明るい笑顔がつい重なって見える。
しかし、当然ながら借金が本作のテーマではなく、本題に入るのは、暢子が料理人としての入り口に立ち、鶴見がメインの舞台となる、これからなのだ。

文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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