【ちむどんどん】鬱陶しい男から好感度急上昇! フラれ役多数の渡辺大知さんが見せた細やかさ

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「これぞ良心? 比嘉家の周囲の人々」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】予告の「人生最大のピンチ」が安心感に? メイン舞台が銀座と鶴見に移り料理人の入口へ

【ちむどんどん】鬱陶しい男から好感度急上昇! フラれ役多数の渡辺大知さんが見せた細やかさ pixta_50637790_S.jpg

本土復帰前の沖縄本島・やんばる地域で生まれ育ったヒロインと家族の50年間の歩みを描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第7週。

今週は、銀座の西洋料理店「アッラ・フォンターナ」で働き始めた比嘉暢子(黒島結菜)の「修行」と、良子(川口春奈)の恋バナ・結婚が平行して描かれた。

沖縄では本土返還によって通貨や交通ルールなどが変わり、日常生活に様々な混乱が生じたというが、そうした外的要因をものともせず、我が道を突き進むのが比嘉家のたくましさだ。

しかし、そんな比嘉家が嵐となり、周り中を巻き込んで引き起こす騒動が東京、沖縄それぞれで見られる。

オーナーの房子(原田美枝子)に10連勤を言い渡された暢子は、絶対にやめないと宣言するが、一生懸命ながらも皿を割ったり、掃除中もウトウトしたり。

朝ドラでは主人公の下積みが描かれるケースが多く、未熟ゆえの不満や嘆きが描かれるのは、一つの定番だ。

例えば『カーネーション』でも糸子(尾野真千子)がお客様扱いされていたパッチ屋で、「修行」に入った途端、窓ふきお茶くみ掃除などばかりやらされ、泣いていた。

しかし、「縦縦横横」と磨き残しのない窓の拭き方を糸子に教える先輩の丁寧な仕事ぶりを見ると、一見では仕事に直結しそうにない雑用がどれもこれも勉強になると感じ、背筋が伸びる思いだった。

その点、暢子は根っからの食いしん坊&暢気者であるためか、10連勤もなんとかクリア。

やんばる地方から鶴見にやって来た智(前田公輝)と再会した後には、従業員の作ったペペロンチーノにダメ出ししたオーナーに向かって「自分で料理しないくせに偉そうです。みんなそう思ってます」と口出し。

自身もまかないを作らせてもらうかクビになるかという大胆な賭けに出て、房子とのペペロンチーノ対決に挑む。

実は暢子はペペロンチーノをよく知らなかったのだが、それまでの働きづめの日々とは打って変わって、たっぷりの時間と材料を費やし、母の作るソーミンチャンプルーをヒントにペペロンチーノを作り、それが好評に。

しかし、房子の作るペペロンチーノが圧勝だったことを素直に認め、おかわり&謝罪し、今後質問や口答えは一切しないことなどを条件に、引き続き店に置いてもらうことになるのだ。

一方、沖縄では煮え切らない石川(山田裕貴)への思いを残しつつ、良子が御曹司・金吾(渡辺大知)の求婚に応じる決意をする。

職場に現れては「ピースピース」言うばかりの鬱陶しい男に思えた金吾だが、家事はしなくて良い、仕事も続けて良いと言い、好感度急上昇に。

さらに、金吾の良いところは、そうした都合の良さばかりではなく、両家の顔合わせに石川が乗り込んで来ても、石川の非礼ぶりにキレるのではなく、視線はあくまで良子の表情を追っていたこと。

そして、良子が突然結婚の話をひっくり返しても、怒るわけでもなく、良子を絶対に幸せにすることを石川に約束させた後、やはり良子の顔を見ていつもの笑顔を向けること。

金吾の目にうつるのは、恋敵ではなく、その心を占めているのも怒りや嫉妬でもなく、常に大好きな良子のことばかりなのだ。

フラれ役を演じることの多い渡辺大知さんの芝居の細やかさが、間違いなく今週のMVPだろう。

そして、暢子の内定話を潰され、良子の縁談も潰され、厚意をことごとく比嘉家に踏みにじられつつも赦し、若者たちの意思を尊重してくれる善一さん(山路和弘)の人の良さ。

ぜひスピンオフでは本作の「良心」とも言うべき善一さんが語る比嘉家のドタバタ事件簿を描いてほしい。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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