入院時、「差額ベッド料」でトラブルを防ぐ方法。「とりあえずサイン」は危険!【専門家が解説】

差額ベッド料はどのくらいになるの?

一日の差額ベッド料(個室)の全国平均(2022年7月)は、8322円。

都道府県別の平均を見ると、東京都が一番高く1万9770円で、その次に神奈川県、大阪府と続きます。

一方、一番安いのは秋田県で3538円。

大都市だと長期入院時にはかなりの差額ベッド料を請求されることが分かります。

「同意書に限らず、書類にサインする際は内容を確認することを徹底しましょう。それでもトラブルが起きてしまった場合、私たちは電話相談(※)を受け付けています」と、山口さん。

下で紹介している内容にも注意して、安心して入院治療を受けたいですね。

ささえあい医療人権センターCOML (電)03-3830-0644(月・水・金は10〜13時、14〜17時、ただし月が祝日の場合は翌火に振り替え。土は10〜13時)

差額ベッド料で注意したいこと

入院時、「差額ベッド料」でトラブルを防ぐ方法。「とりあえずサイン」は危険!【専門家が解説】 2312_P077_01.jpg(1)同意書を保留した後は、すぐに交渉する
差額ベッド料の同意書にサインを求められた場合、「『これはちょっと高すぎる...』などと感じたら、保留するようにしてください」と、山口さん。

「すぐにサインせず、『私の一存では決められないので少し待ってください』などと言って保留し、何日も先延ばしにせずに速やかに病棟の看護師長などに『差額を払えないので他の部屋にしたい』と交渉するのがよいでしょう。その際、『差額を払いたくない』とは言わずに、『払えない』と伝えて交渉するのがよいですね。また、医療費は0時を起点に発生します。例えば夜の11時に『差額ベッド』に同意して緊急入院することになり、翌朝10時に無事が確認できて退院となった場合、11時間しか入院していなくても2日分の差額ベッド料がかかるのでご注意ください」(山口さん)

(2)医療従事者もルールを知らないことがある
差額ベッド料についてのトラブルが絶えない理由の一つに、「病院の医療従事者もルールをよく分かっていないという点が挙げられます」と、山口さん。

「医療現場では医療安全や感染予防など、他にも必要な仕事がたくさんあります。現実的に、差額ベッド料のような医療事務のルールを細かく把握してもらうというのは難しい部分があります。その分、患者側も差額ベッド料についての知識を得ておく必要があります。知識がないと病院側の対応の何が問題なのかが分からず、交渉のしようがなくなってしまいますので」と、注意を促しています。

(3)病院側が言い出したら「治療上の必要」に該当
前述のように、治療上の必要で「特別療養環境室」に入る場合は、差額ベッド料を支払う必要はありません。

しかし、治療上で必要かそうでないかは、どのようにしたら判断できるのでしょうか。

「言い出しっぺが誰で、どんな理由なのかが大切になります。例えば『人工呼吸器の使用や術後管理のために、個室に入ってもらいます』というようなことを病院側が言い出したら、それは治療上の必要になります。他には著しく心身共に苦痛を伴う終末期の場合も治療上の必要にあたります。ただし、その際に家族が『最期を看取りたいから個室にしたい』と希望すれば、それは患者側の希望になるので差額ベッド料が発生します」と、山口さん。

構成・取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

ささえあい医療人権センターCOML(コムル) 理事長
山口育子(やまぐち・いくこ)さん

1965年生まれ、大阪府出身。患者の主体的医療参加を目指して活動を続ける。『入院する前に知っておきたい 新・差額ベッド料Q&A 』(岩波ブックレット)の原稿執筆も担当。

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