入院時、「差額ベッド料」でトラブルを防ぐ方法。「とりあえずサイン」は危険!【専門家が解説】

普段、普通に生活をしていても、突発的な病気や事故にあい、急患で入院する必要が出てくるときもあります。その際に気をつけておかなければいけないのが、個室病室の差額ベッド料です。今回はこのトラブルを未然に防ぐ方法を、ささえあい医療人権センターCOMLの理事長である山口育子(やまぐち・いくこ)さんにお伺いしました。

※この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年12月号に掲載の情報です。

トラブルが発生する原因とは何?

近年、プライバシーが守られる中で快適に入院治療を受けたいという人が増え、病院側も個室などを用意するケースが増えています。

この個室をはじめとする広めの病室は、下で示している「特別療養環境室」というものなのですが、保険の適用外になるので、使用するには一日ごとに別料金が発生します。

これが差額ベッド料です。

この差額ベッド料ですが、自分で希望して入院する分には問題は起こりません。

しかし、気付かないうちに意図に反して「特別療養環境室」に入院することになり、後で高額が請求されてトラブルになる場合があることが、以前から問題視されています。

なぜトラブルが起こるのでしょうか。

長年この問題の対策に関わる山口育子さんは「いまもトラブルが起こってしまうのは、一般の病室の『空きベッド』が不足している場合があるからです」と話します。

例えば急患の緊急搬送時などで、至急入院が必要な状態であったとしても、一般の病室に空きベッドがないことがあります。

「入院のために病院側から複数の書類へのサインを求められるのですが、この中に差額ベッド使用の同意書もあって、内容をよく確認せずにサインをしてしまうというケースが多いのです」(山口さん)

2018年7月に厚生労働省から出された医療通知があります。

「そこには一般の病室に空きベッドがない場合、『差額ベッドについての設備構造、料金等についての明確な説明がないまま同意書に署名させられること』や、『入院の必要があるのに同意書にサインしないのであれば他院を受診するように言うこと』は不適切だと明記されています」と、山口さん。

「一般の病室に空きベッドがない場合でも、夜の急患の場合などでは入院せざるを得ません。そういう場合は、まず同意書へのサインは保留したまま入院してしまって、翌朝に他の大部屋などへ移れないか病院側と交渉するようにしましょう。一度同意書にサインをしてしまうと、支払いを免れることができなくなります」と続けます。

もう一点注意したいのは、下にあるように、「治療上の必要」がある場合には、差額ベッド料を支払う必要がないことです。

「病院が『個室でなければあなたの治療ができない』と言った場合は、差額ベッド料は発生しません。この場合、同意書へのサインも不要です」(山口さん)

差額ベッドってどんな病室?

差額ベッド料が発生する「特別療養環境室」の条件は?
●ベッド数が4床以下の病室であること
●病室の面積が1人あたり6.4㎡以上
●ベッドごとにプライバシーを確保するための設備を整えている
●個人用の私物収納設備や照明、小机、いすを設置

<注意>
・必ずしも個室とは限りません
・プライバシーを確保する設備はカーテンでも認められます

病院が差額ベッド料を請求できないのは、こんなケース
●病院側が患者に懇切丁寧な説明を行った上で同意を得ていない場合
●治療上の必要がある場合
●病棟の管理上の理由で、同意がないまま入室した場合

 

<教えてくれた人>

ささえあい医療人権センターCOML(コムル) 理事長
山口育子(やまぐち・いくこ)さん

1965年生まれ、大阪府出身。患者の主体的医療参加を目指して活動を続ける。『入院する前に知っておきたい 新・差額ベッド料Q&A 』(岩波ブックレット)の原稿執筆も担当。

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