フッ素樹脂が水をはじく! 撥水スプレー/身のまわりのモノの技術(17)【連載】

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古くなった傘は、雨の水滴がなかなか取れない。しかし、撥水スプレーをひと吹きしておくと、新品のように水をはじくようになる。スキー場に行って、スキーウエアにかけておくと、雪の上で転んでも濡れることはない。

スプレーの主成分となる撥水剤にはさまざまな種類があるが、服や傘などに吹きかける撥水剤の多くはフッ素樹脂を成分に持っている。フッ素樹脂はきわめて安定しており、他の物質と作用しない。このことは、フライパンの表面加工に用いられていることからもわかる。他と作用しないというこの性質は、水に対しても当てはまる。したがって、フッ素樹脂の微粒子を吹きかけておけば、水はなじむことなく弾かれる。これが撥水のしくみである。

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車のガラスに吹きかける撥水剤の多くはシリコーン樹脂を成分とする。シリコーン樹脂はケイ素を骨格にした樹脂である。ケイ素は炭素と親戚であり、炭素からできた油脂が水と分離するように、シリコーン樹脂にも水を遠ざける性質がある。この疎水性を利用して撥水効果を出すのだ。

ガラスにシリコーン樹脂の撥水剤を利用するのは、ともにケイ素が主成分のため、相性がいいからだ。ワイパーでこすっても落ちにくい。

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ガラスに吹きかけられたシリコーン樹脂の撥水性のしくみをミクロに見てみよう。撥水剤をスプレーすると、ガラスと相性のいいシリコーン樹脂の分子はきれいに表面を覆い、水分子が入り込みにくくなる。さらに、ガラスと相性のいいシリコーン樹脂の分子はガラスから剥がれにくい。これが分子の世界で見た撥水性の秘密である。

ちなみに、ケイ素をシリコン(silicon)という。その有機化合物のシリコーン(silicone)とは異なるものだが、マスコミなどでは後者も「シリコン」と書き表すことがある。

撥水に似た言葉に防水がある。撥水は水をはじくだけだが、防水は水を通さないことを意味する。防水加工された衣類が蒸れやすいのはこのためだ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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