ご近所や家族、パートナーや職場の人間関係に、もううんざり...。そんなあなたに贈りたいのが、臨床心理士の高品孝之さんの著書『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)。「人間関係はRPG(ロールプレイングゲーム)。ルールを知り、役割をうまく演じれば対応できる」という高品さん考案のトラブル攻略法を厳選して、連載形式でお届けします。
「笑ってくれ」ゲーム
「笑ってくれ」ゲームは、くだらない失敗を繰り返して、人の笑いを誘うことではじまります。
くだらない失敗をする仕掛け人は、知性と能力があり、くだらない失敗を繰り返すような人ではありませんが、他者を通して自分の否定的な部分を確認するために、このゲームを行います。
※以下文中に出てくる用語について
・仕掛け人:人間関係ゲームを仕掛ける人
・カモ:仕掛けられる人
酒で死ぬのが本望な男(視点:仕掛け人)
ある会社の総務部長・佐藤司さん(53歳)はとても大酒飲みです。
最近は糖尿病の値が高く、お酒を飲みすぎないようにと医者から注意されています。
しかし、それでも同僚と深夜までお酒を飲むことが続いていました。
同僚たちも、口では、「佐藤さん、そんなに飲んだらいつか糖尿で死んでしまいますよ」と言うのですが、佐藤さんと一緒に酒を飲むと楽しいので、つい一緒に飲んでしまいます。
佐藤さんは佐藤さんで、「好きなものを飲んで食べて死ねるなら本望だね。これこそ、まさに男らしい死に様だね」と言い、それを聞いた同僚たちはクスクスと笑っています。
佐藤さんの飲酒は、笑い事ではありません。
それなのに佐藤さんは酒を飲んでは、まるでピエロのごとく自分を卑下して語りながら、周りの笑いを誘っています。
このように、決して笑う場面ではないのに、自分を笑い者にしてしまうのが、「笑ってくれ」ゲームです。
仕掛け人は、自分を否定して笑い者にすることで、他者との均衡を保っていると考えられます。
ただ、他者を否定しないので、妙な明るさがあります。
「笑ってくれ」ゲームの仕掛け人は、次の3つの性格的な特徴があります。
(1)基本的な性格:社交的であり、親切、善良な一面
(2)気分がいい時の性格:明朗、ユーモアがある一方で、激しやすい一面
(3)気分が落ち込んでいる時の性格:陰気、気が弱い、口先が少ない一面
「笑ってくれ」ゲームは、仕掛け人の気分がいい時に起こりやすいゲームです。
ただし、仕掛け人の気分が落ち込んでいる時にいつものノリで、仕掛け人を笑ってしまうと、恨みを買うことになるので注意が必要です。
また、このゲームを繰り返すうちに、仕掛け人の性格が徐々に変わってくることもあります。
周りが笑う度に、仕掛け人が自分を否定する傾向が強くなることもあるので、気をつけましょう。
「私を笑ってくれ」ゲームの進行
「私を笑ってくれ」ゲームは、次のように進行します。
1.前提
(1)くだらない失敗が存在する。その失敗は重要なことである場合が多い
(2)仕掛け人が、他人の笑いを誘う「まぬけな言動」をする
(3)カモは、人の粗探しを好む人に多い
2.事件(混乱)が起こる
(1)いつも笑われている仕掛け人の気分が落ち込んでいて、あまり笑われたくない状態である
(2)仕掛け人は笑われたくないのに、いつものように笑われる
3.結末(最終的にどのようになるか)
(1)仕掛け人が、自己卑下をする(自分はどうせ馬鹿だと思うなど)
(2)仕掛け人が、無気力になったり、イライラしたり、抑うつ状態になる