「これ、笑っていいの?」気づくと恨みを買っている「笑ってくれゲーム」/イヤな人間関係(7)

ご近所や家族、パートナーや職場の人間関係に、もううんざり...。そんなあなたに贈りたいのが、臨床心理士の高品孝之さんの著書『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)。「人間関係はRPG(ロールプレイングゲーム)。ルールを知り、役割をうまく演じれば対応できる」という高品さん考案のトラブル攻略法を厳選して、連載形式でお届けします。

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「笑ってくれ」ゲーム

「笑ってくれ」ゲームは、くだらない失敗を繰り返して、人の笑いを誘うことではじまります。

くだらない失敗をする仕掛け人は、知性と能力があり、くだらない失敗を繰り返すような人ではありませんが、他者を通して自分の否定的な部分を確認するために、このゲームを行います。

※以下文中に出てくる用語について

・仕掛け人:人間関係ゲームを仕掛ける人

・カモ:仕掛けられる人

酒で死ぬのが本望な男(視点:仕掛け人)

ある会社の総務部長・佐藤司さん(53歳)はとても大酒飲みです。

最近は糖尿病の値が高く、お酒を飲みすぎないようにと医者から注意されています。

しかし、それでも同僚と深夜までお酒を飲むことが続いていました。

同僚たちも、口では、「佐藤さん、そんなに飲んだらいつか糖尿で死んでしまいますよ」と言うのですが、佐藤さんと一緒に酒を飲むと楽しいので、つい一緒に飲んでしまいます。

佐藤さんは佐藤さんで、「好きなものを飲んで食べて死ねるなら本望だね。これこそ、まさに男らしい死に様だね」と言い、それを聞いた同僚たちはクスクスと笑っています。

佐藤さんの飲酒は、笑い事ではありません。

それなのに佐藤さんは酒を飲んでは、まるでピエロのごとく自分を卑下して語りながら、周りの笑いを誘っています。

このように、決して笑う場面ではないのに、自分を笑い者にしてしまうのが、「笑ってくれ」ゲームです。

仕掛け人は、自分を否定して笑い者にすることで、他者との均衡を保っていると考えられます。

ただ、他者を否定しないので、妙な明るさがあります。

「笑ってくれ」ゲームの仕掛け人は、次の3つの性格的な特徴があります。

(1)基本的な性格:社交的であり、親切、善良な一面

(2)気分がいい時の性格:明朗、ユーモアがある一方で、激しやすい一面

(3)気分が落ち込んでいる時の性格:陰気、気が弱い、口先が少ない一面

「笑ってくれ」ゲームは、仕掛け人の気分がいい時に起こりやすいゲームです。

ただし、仕掛け人の気分が落ち込んでいる時にいつものノリで、仕掛け人を笑ってしまうと、恨みを買うことになるので注意が必要です。

また、このゲームを繰り返すうちに、仕掛け人の性格が徐々に変わってくることもあります。

周りが笑う度に、仕掛け人が自分を否定する傾向が強くなることもあるので、気をつけましょう。

「私を笑ってくれ」ゲームの進行

「私を笑ってくれ」ゲームは、次のように進行します。

1.前提

(1)くだらない失敗が存在する。その失敗は重要なことである場合が多い

(2)仕掛け人が、他人の笑いを誘う「まぬけな言動」をする

(3)カモは、人の粗探しを好む人に多い

2.事件(混乱)が起こる

(1)いつも笑われている仕掛け人の気分が落ち込んでいて、あまり笑われたくない状態である

(2)仕掛け人は笑われたくないのに、いつものように笑われる

3.結末(最終的にどのようになるか)

(1)仕掛け人が、自己卑下をする(自分はどうせ馬鹿だと思うなど)

(2)仕掛け人が、無気力になったり、イライラしたり、抑うつ状態になる

【次ページ:「笑ってくれ」ゲームから抜け出す方法】

 

高品孝之(たかしな・たかゆき)
1960年北海道生まれ。臨床心理士。一級交流分析士。博士(教育学)。早稲田大学国文科卒業後、高校の教員になるも人間関係のトラブル解決の困難さを目の当たりにし、心理学を学ぶ。北海道大学大学院教育研究科博士後期課程を修了後、30年間、高校の現場で心理学的手法を用いて、生徒と生徒、生徒と親、親と親など、さまざまな人間関係のトラブルを解決してきた。

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『イヤな人間関係から抜け出す本』

(高品孝之/あさ出版)

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※この記事は『イヤな人間関係から抜け出す本』(高品孝之/あさ出版)からの抜粋です。
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