つらい人間関係が始まる2つの条件「本音と建て前」「ニセモノの感情」/イヤな人間関係(2)

ご近所や家族、パートナーや職場の人間関係に、もううんざり...。そんなあなたに贈りたいのが、臨床心理士の高品孝之さんの著書『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)。「人間関係はRPG(ロールプレイングゲーム)。ルールを知り、役割をうまく演じれば対応できる」という高品さん考案のトラブル攻略法を厳選して、連載形式でお届けします。

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表面所の言葉や態度と違う、隠れた意図(裏面交流)がある

ここからは、人間関係のゲームが成立するために必要な、2つの条件について見ていきましょう。

2つの条件とは次の通りです。

1.表面上の言葉や態度と違い、隠れた意図がある
2.仕掛け人(ゲームを仕掛ける人)もカモ(仕掛けられる人)も、嫌な感情を味わうために行われる

1つめの条件となる「表面上の言葉や態度と違い、隠れた意図がある」ことを、交流分析(※)で「裏面交流」といいます。

※心理学の一分野。自分の心が安らかになり、人間と人間の交流(関係)がスムーズになるようにパターンやルールを明らかにしたもの。

例えば、学校で、生徒指導担当の怖い先生が生徒に、「服装をきちんとして学校に登校しなさい。規律を守ることがとても大切ですよ」と話し、生徒が次のように返答したとします。

「はい。わかりました」

しかし、この会話をしている時の2人の内心を見てみると、まったく違う情景が見えてきます。

「服装をきちんとして学校に登校しなさい。規律を守ることがとても大切ですよ」
→また、だらしない服装で登校しやがって! お前など学校に来なくていい!

「はい。わかりました」
→うるさい先生だ。何を着ようが個人の自由だろう! この先生がいるから、学校が面白くないんだよ!

どうでしょう。

思い当たる経験のある人もいるかもしれませんね。

人は、多かれ少なかれ本音と言っていること、やっていることが違うことがあります。

それが、建前です。

現状をうまくまわすために、使うことが多いでしょう。

しかし、ゲームに陥っていると、この内心がコミュニケーションのツールになります。

お互いが腹の探り合いをしながら(裏面交流を使って)、相手と心理的なやりとりをするのです。

この裏面交流は、無意識に相手の意図を察知する場合が多く、やりとりによって、相手をコントロールして、傷つけたり、また不快な気分を味わわせたりします。

その結果、相手に対する不信感を募らせます。

双方が嫌な感情を味わうこと

もう1つの条件は、「仕掛け人もカモも、嫌な感情を味わうために行われる」です。

交流分析では、ゲームの時に現れる感情を「ラケット感情」と呼びます。

通常、人は人間関係の中で悲しみや怒りなどといった感情を抱きます。

人間関係があってこその感情というわけです。

ところが、ゲームにおいては、逆の発想をします。

わかりづらいので、事例を使ってお話ししましょう。

ある作家が、小説を書く時に、まず、クライマックス(盛り上がり)のシーンを考えてから書き出したいと考えました。

そして実際に、恋人と別れ絶望している女性が、友達に慰められるというシーンを考え出したのです。

すっかり満足した作家は、この「絶望」のシーンに向かって、小説を書き出しはじめました。

恋人との出会い、楽しい日々、恋人との別れ、そして最後に「絶望」のシーン......と書き綴っていきました。

つまり、この作家の心には、最初からこの「絶望」のシーンがあったため、すべてそのシーンに合わせて物語を書き進めていったわけです。

ゲームで現れる感情も、この話と似た働きがあります。

最後に味わいたい感情がまずあり、それに向けてゲームが進められるのです。

最後に「怒り」を味わいたいのであれば、自分が怒るような人間関係の環境をつくり、「悲しみ」を味わいたいのであれば、自分が悲しむような人間関係の環境をつくっていくのです。

カモは、たまったものではありません。

さらに、この最後に味わいたい感情は、もう1つ別の目的が隠されています。

例えば、先ほどの事例に登場する女性は「絶望」しています。

この「絶望」は恋人に振られた「悲しみ」の感情から派生したものと考えられます。

なぜ、女性は「絶望」を表したのか。

それは、「悲しい」という感情より、「絶望」の感情を表したほうが、友達は自分のために、いろいろしてくれる、つまり他人をコントロールできるとわかっていたからです。

ここでも、ゲームがはじまっているのです。

ゲームの必需品「ラケット感情」

ゲームにおいて、小説の中の女性のように、人間関係をコントロールするために、本来の感情を隠してほかの感情を表すことはよくあることです。

相手にこちらの思い通りに動いてもらうために示すニセモノの感情が「ラケット感情」です。

「ラケット」とは、アメリカの俗語で、密輸などを行う犯罪組織のことです。

知らず知らずのうちに、状況をコントロールして悪さをするという意味で、この言葉が名づけられたというわけです。

他人をコントロールして、自分の利益を上げるために使われる感情のこととも言えるでしょう。

この「ラケット感情」は小さい頃に培われます。

例えば、こんな経験はありませんか。

欲しいのに買ってもらえない

→悲しい(感情)

→買ってもらうためにどうするか

→怒りを爆発させて地団太を踏む(ニセモノの感情の表現)

→親が降参して買ってくれる(思い通りにコントロールする)

ラケット感情は、こうした成功経験から身につけていきます。

大人になった後も、無意識のうちにラケット感情を活用していることは少なくありません。

1つめの条件「表面上の言葉や態度と違い、隠れた意図がある」とも関連しているというわけです。

ちなみに、交流分析では、他人をコントロールしない本来の感情は、「喜び」「怒り」「悲しみ」「怯え」しかないとしています。

つまり、これら以外の感情、例えば、自己卑下や驚き、憎悪など、さまざまな感情すべては「ラケット感情」であると考えられています。

気をつけて対応しましょう。

投影について

ゲームだけに限る心の働きではないのですが、ゲームを理解するのに不可欠な、「投影」という心の働きについてお話ししましょう。

投影とは、「自分が認めたくない自分の嫌な部分を他人に投げ出して、他人を嫌に思う心の働きのこと」です。

例えば、「〇〇さんは自分を嫌っている」と思うことがあるとします。

「お前なんか嫌いだ!」と言われたわけではないのですが、態度から、そう思ってしまいます。

しかし、よく思いを巡らせてみると、自分のほうが〇〇さんを嫌っていることがあります。

自分が「人を嫌いになる嫌な人間である」ことを自分で認めたくないために、〇〇さんが自分を嫌いと思うことで、〇〇さんを遠ざけるのです。

このように、自分の嫌な部分を認めないで、他人の中に見出すことを投影といいます。

ゲームではこの心の働きも一役を買っています。

ゲームの終了について

ここで、ゲームの終わらせ方を述べておきます。

言葉で言うと実に簡単で、

(1)「ミスをしない」
(2)「仕掛け人の否定的な気持ちに反応しない」
(3)「大人の対応を心掛けて事実を告げる」
(4)「ゲームの場から離れる」

の4つです。

(1)は、仕掛け人にゲームを行わせないための方法です。

(2)は、ゲームがはじまる核となる仕掛け人の否定的な気持ちが攻撃的な気持ちに変わらないように気をつけて、ゲームを行わせない方法です。

(3)は、感情に左右されず大人の対応をすることで、相手に事実を認識してもらい、ゲームを終わらせる方法です。

(4)は、ゲームが起こりそうになった時、その場から離れることでゲームそのものから抜け出す方法です。

※取り上げている事例は、ゲームを理解しやすくするために、実際にあった事例をもとに筆者が考えたものです。どの事例も、状況が変われば、別のゲームが生じることがあります。あらかじめご承知おきください。

【最初から読む】誰かの「カモ」になってしまう3つの原因

【まとめ読み】「イヤな人間関係から抜け出す本」記事リスト

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心理学の理論をもとにした10のゲーム。5章にわたって人間関係のルールとトラブル攻略法が解説されています

 

高品孝之(たかしな・たかゆき)
1960年北海道生まれ。臨床心理士。一級交流分析士。博士(教育学)。早稲田大学国文科卒業後、高校の教員になるも人間関係のトラブル解決の困難さを目の当たりにし、心理学を学ぶ。北海道大学大学院教育研究科博士後期課程を修了後、30年間、高校の現場で心理学的手法を用いて、生徒と生徒、生徒と親、親と親など、さまざまな人間関係のトラブルを解決してきた。

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『イヤな人間関係から抜け出す本』

(高品孝之/あさ出版)

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※この記事は『イヤな人間関係から抜け出す本』(高品孝之/あさ出版)からの抜粋です。
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